出力抑制の実質的なリスクを理解することが重要

――指定電気事業者制度は、「無制限の出力抑制」という負の側面ばかりが強調されて、それによって、系統接続が必ず可能になるプラス面への評価が目立ちません。

鈴木 保留解除までの対応で問題があるとすれば、まさにその点です。「無制限に出力抑制」という条件がつくものの、今回の対応が緊急避難的なものであることや実際には今後、どうなるのかという点の説明がなく、実質的なリスクの解説が足りないのです。

 抑制日が30日を超え、「無制限」が条件というと、売電量が半分以下になってしまうような大幅な出力抑制のリスクをイメージする人もいますが、それは大きな誤解です。経産省の系統ワーキンググループ(WG)で試算した接続可能量の前提は、あくまで「現行ルールのもと」です。ベース電源となる原子力発電の稼働は、再エネの出力抑制を増やすことになりますが、系統WGでは、「東日本大震災前の30年間の稼働数と設備利用率」を使っています。一方で、地域間連系線の活用は、出力抑制を減らす手段になりますが、現行ルールを前提にするため本格的に見込んでいません。

 実際には、原発はある程度、時間をかけて徐々に再稼働していきます。太陽光発電も、「接続可能量」が一気に導入されることはなく、年ごとに徐々に増えます。加えて、電力システム改革が始まれば、電力会社のエリアを超えた系統の広域運用が本格化し、東京電力、中部電力、関西電力の「中3社」の大きな電力系統を活用できるようになります。つまり、接続可能量を超えて、「無補償・無制限の出力抑制」の条件で系統に接続したとしても、大幅に出力抑制されるとは考えられません。

自民党議員でさえ、原発稼働数の前提は「非現実的」

――接続可能量を算定した系統WGにおける原発稼働数の前提には、環境NGO(非政府組織)などが、「非現実的」と批判しています。

鈴木 実は、昨年末に自由民主党の資源・エネルギー調査会・再生可能エネルギー普及拡大委員会の場で、固定価格買取制度(FIT)の運用などに関し、JPEAとしての考え方を説明しました。その席には、経産省の幹部も出席していました。席上では、自民党の議員からも、経産省に対し、「間もなく運転期間が40年に達する原発も含めるのは現実的でない」「電力システム改革によって今後、電力会社のエリアという概念がなくなるのに、電力会社ごとに接続可能量を算出するのは適切なのか」などの意見が出ました。

 「安全を確認できた原発から再稼働する」との方針を掲げる自民党の議員からでさえ、系統WGでの原発稼働数の前提には疑問を持たれています。これに対し、経産省の幹部は、「系統WGによる今回の接続可能量はあくまで暫定値です。電力システム改革などによって状況は変わってきます」などと答えていました。