接続可能量は、「参考値」に過ぎない
――マスコミも含め、「接続可能量が確定した」という表現も、誤解を招きやすいですね。

鈴木 あえて経産省の立場を代弁すれば、指定電気事業者制度を活用するには、接続可能量を「確定」する必要があるので、「暫定値」と強調するわけにはいきません。また、原発の稼働数に関しても、原発の再稼働は原子力規制委員会が決めることなので、経産省の判断で中途半端な稼働数を前提にできません。経産省のジレンマは容易に想像できます。
結果的に原発の稼働数や実際の太陽光の導入量、そして地域間連系線の活用方法など、今回の系統WGの接続可能量の検討は、変数が大きすぎて、実際にどうなるのかが見えなくなってしまいました。今回の接続可能量は、経産省でも「暫定値」と言っていますし、JPEAでは「参考値」に過ぎないと考えています。
――では、実際に、出力抑制は、どの程度になると見ていますか。
鈴木 風力と太陽光の電力供給に占める割合が20%を超え、無制限の出力抑制を導入したスペインでも、実際の出力抑制は約2%です。日本でも、今後、日単位から時間単位の出力抑制にすることも含め、今回の接続可能量を超えて接続した場合でも、実際の出力抑制は発電量全体の10%以下にできるのではないか、というのが大方の専門家の見方です。厳し目に見ても10%を超えるイメージです。
「出力抑制シミュレーション」を公開へ
――そうはいっても、金融機関は「無制限の出力抑制」という条件だけで、最悪の場合を想定して事業性を評価しがちです。ファイナンスが難しくなりませんか。
鈴木 確かに事情に詳しくない金融機関の担当者にこうした定性的な説明をしても、なかなか理解してもらえない可能性があります。そこで、JPEAでは、原発再稼働と太陽光発電のロードマップに複数パターンの前提を置き、それぞれのシナリオでどの程度の出力抑制になるか時間軸に沿って試算して公表する予定です。この計算手法もすべて公開して、事業者や金融機関などが自分で試算できるようにしたいと思います。
こうした、現実的に予測される「出力抑制シミュレーション」を複数の機関が公表すれば、事業者や金融機関は、複数の数値を比較しながら、実際の事業リスクを判断できるようになります。できれば、各電力会社が今後の出力抑制の予想値を公表してくれるのが理想です。経産省も、各電力会社にそのようにを促しています。