北海道の発電事業者は「無制限」を怖がらない

――試算においては、やはり最終的な原発稼働数をどう見るかが難しそうですね。

鈴木 政府は、11月末からの国連の会議に温室効果ガス削減目標を提出する必要があるため、今年中にはエネルギーミックス(電源構成)を決めるはずです。そうなれば、国全体として再稼働する原発の数が定まり、それを基に各電力会社が再稼働する数も見えてくるはずです。出力抑制の推移も予測しやすくなります。

――北海道では、すでに接続可能量を大幅に超えた接続申し込みを受け付けています。

太陽光発電協会(JPEA)の鈴木伸一事務局長(出所:日経BP)

鈴木 実は、北海道ではすでに実際の出力抑制を冷静に予測しつつ、「無制限の出力抑制」の条件の下でも、太陽光発電事業が開発されています。昨年、北海道電力における太陽光発電の接続可能量は117万kWと確定しました。だが、同社はすでに250万kW分の接続申し込みを受け付けています。接続可能量の2倍以上の申し込みを受け付けたのは、「無補償で無制限の出力抑制」を承諾した事業者が多数、含まれているからです。

 こうした北海道の太陽光事業者はファイナンスも確保しています。北海道の事業者が無制限の出力抑制でも投資に踏み切ったのは、「当面、泊原発が稼働しない」と見ているからです。原発が稼働しない10年程度の間に、ほぼ初期投資を償却してしまうシナリオを立てているようです。北海道以外の地域でも、このように出力抑制の可能性を現実に即して冷静に予測することで、「無制限の出力抑制」の条件下でも発電事業を開発できるはずです。