太陽光発電の大量導入が現実化し、電力系統への負荷をいかに抑えるかが、持続的な市場成長のカギとなってきた。その切り札である蓄電池への期待が高まっている。北海道や沖縄、各地の離島では、すでに短周期の周波数変動への対策から蓄電池設置が求められている。今後、接続可能量を超えて無制限・無補償の出力抑制が始まると、抑制分を蓄電池に蓄える動きが顕在化する可能性も高い。経済産業省も、補助金制度でこうした動きを後押しする。太陽光発電向けの蓄電池システムに取り組む先端の動きを紹介する。

再エネ蓄電池プロジェクト最前線
太陽光発電の大量導入が現実化し、電力系統への負荷をいかに抑えるかが、持続的な市場成長のカギとなってきた。その切り札である蓄電池への期待が高まっている。北海道や沖縄、各地の離島では、すでに短周期の周波数変動への対策から蓄電池設置が求められている。今後、接続可能量を超えて無制限・無補償の出力抑制が始まると、抑制分を蓄電池に蓄える動きが顕在化する可能性も高い。経済産業省も、補助金制度でこうした動きを後押しする。太陽光発電向けの蓄電池システムに取り組む先端の動きを紹介する。
目次
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普及目前!再エネ蓄電池、米欧亜企業がしのぎ
系統安定化、低価格化、高付加価値サービスが後押し
リチウムイオン蓄電池やP2G(パワー・ツー・ガス)などのストレージ設備を設置する動きが世界各国で活発化してきた。日経BP総研クリーンテック研究所がこのほど発行した調査レポート『世界再エネ・ストレージビジネス総覧』によると、(1)再生可能エネルギーの増加に伴う系統安定化や余剰問題の深刻化、(2)ストレ…
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「大規模太陽光・風力+ストレージ」が世界で続々
短周期・長周期変動対策、マイクログリッドの3タイプで
メガソーラー(大規模太陽光発電所)や風力発電所などの再生可能エネルギーに併設するタイプのストレージの導入が海外で活発化してきた。日経BP総研クリーンテック研究所がこのほど発行した調査レポート『世界再エネ・ストレージビジネス総覧』(http://cleantech.nikkeibp.co.jp/re…
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「太陽光」の後ろを追いかけ始めた「蓄電池ビジネス」
カリフォルニアで見えてきた蓄電池のビジネスモデル
新たなエネルギービジネスが次々と誕生している米国。特に、分散電源を活用した新たなビジネスモデルでは世界のトップを走る。そこで本連載ではシリコンバレーで25年超、エネルギービジネスなどのリサーチを手がけてきたクリーンエネルギー研究所の阪口幸雄代表に最新のビジネス動向を解説してもらう。初回のテーマは、阪…
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GSユアサ、系統安定化向け大型蓄電池事業を推進
釧路町のメガソーラーに日本製蓄電池として初の搭載
蓄電池メーカーのGSユアサが、系統網を安定化させるための大型蓄電池事業を活発化させている。
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「風力でも蓄電池併設型が急成長も」、TMEIC・杉山氏、木暮氏に聞く
電池価格の低下で、系統負荷を抑えた再エネが補助金なしで拡大へ
北海道を中心に蓄電池を併設したメガソーラー(大規模太陽光発電所)の建設が相次いでいる。7月6日には、SBエナジー(東京都港区)と三菱UFJリースが北海道安平町に国内最大規模となる出力34MWの蓄電池を併設するメガソーラーの起工式を行った。蓄電池システムを構築するのは、東芝三菱電機産業システム(TME…
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北の大地に稼働した「大型レドックスフロー電池」の成果
系統側蓄電池による風力・太陽光の導入拡大を検証
北海道電力による南早来変電所での「大型蓄電池システム実証事業」が本格化している。設置したのは、住友電気工業製のレドックスフロー電池で出力15MW、容量60MWhに達する。レドックスフロー電池の運用例としては、世界最大級となる。同実証事業の成果を活用し、蓄電池の併設を条件に風力発電の新規連系枠を増やす…
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米テスラが産業用蓄電システムの現状を公表、「日本でも6カ所で実績」
北海道・九州の再エネ導入支援、離島マイクログリッド向けなどに注力
電気自動車(EV)・蓄電システムメーカー米テスラの日本法人、テスラモーターズジャパンのカート・ケルティ氏(Director, Tesla Energy)は、「PV Japan 2017」(7月5日~7日開催)で蓄電池事業について講演し、産業用システムや、太陽光発電などの出力変動対策向けシステムなどの…
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海外で動き出す「大型蓄電池シェアリング」
蓄電池は電気の“銀行”、住宅間の電力融通も可能に
固定価格買取制度(FIT)が廃止または縮小してきた地域を中心に家庭や事業者が小型蓄電池を搭載するケースが増えてきた。しかし、蓄電池の価格が高いために本格普及するのは2020年以降になると見られている。そこで、大型の蓄電池を地域に設置して、需要家同士でシェアリングして使おうという実証実験がスタートし、…
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壱岐に見る「VPP」の実際、分散する蓄電池を統合制御
メガソーラーの出力抑制をリアルタイムで回避
ソフトバンクグループで再生可能エネルギー事業を手掛けるSBエナジー(東京都港区)は2016年7月から2017年2月にかけて、長崎県壱岐島で、「バーチャルパワープラント(VPP=仮想発電所)」を構築・運用する実証事業を実施した。
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米子発、ドイツを超える「日本版シュタットベルケ」
地元CATV企業がエネルギー地産地消で実績
ドイツ各地で地域のエネルギー事業などを担う公的企業体「シュタットベルケ」が注目されている。電力、ガス事業のほか、水道、通信、交通など地域のインフラを総合的に手掛け、地域の生活環境を高めつつ、雇用を生み出している。
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迫る太陽光への出力抑制!? 九電が大型蓄電池で回避策
30万kWhの「蓄電池変電所」の効果と機能で検証が進む
九州電力・豊前発電所は、福岡県豊前市の北部、周防灘に面した工業地帯に位置する。白い煙突の下には、出力100万kWの大型石油火力が稼動する。東日本大震災後、同発電所内には、2つの新しい設備が新設された。
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国内初、「中容量NAS電池+太陽光」を中小ビルに導入
きんでん、BCP対策とピークシフトを自社ビルで検証
きんでんは今年2月25日、大阪市北区の本社ビルに定置型蓄電池と太陽光発電システムを導入した。出力180kW、容量約1MWhの日本ガイシ製NAS(ナトリウム硫黄)電池と、出力30kWのシャープ製太陽光パネルを屋根上に設置した。屋外型中容量のNAS電池を導入したのは、国内では初めてのケースになるという(…
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南相馬に稼働した40MWhの巨大蓄電池、運用の現場
福島に50MW分の「優先接続可能枠」を創出
東北電力の南相馬変電所は、福島県南相馬市の南端に位置し、東京電力・福島第一原子力発電所から十数キロほどの距離になる。周辺の除染は終了し、復興に向け動き出したが、数km先は、依然、居住制限区域になっており、人影はほとんどない。
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国内初! 太陽光と蓄電池による「自営線マイクログリッド」
東松島市の挑戦する災害でも生き残る街づくり
宮城県のほぼ中央に位置する東松島市は、風光明媚な海岸線に恵まれ、海水浴や遊覧船など、かつては年間100万人以上の観光客が訪れていた。東日本大震災による津波は市街地の65%を襲い、全世帯の約73%に当たる1万1073棟が全半壊した。死者・行方不明者は1134人、避難者は最大で1万5185人に及んだ。
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石巻市最大の集団移転地区に再エネと蓄電池を導入
太陽光の大量導入による電圧の短周期変動を緩和
宮城県石巻市茜平にあるショッピングセンター(SC)「イオンモール石巻」は、東日本大震災の直後、一時的に約2000人が避難し、イオン石巻店の社員らが献身的に対応したことで知られる。被災から5年が経ち、同SCの北西に隣接した「新蛇田地区」では、トラックや重機など、復興の槌音が鳴り響く。
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世界初の「ハイブリッド蓄電池」が隠岐に稼働、Liイオン+NAS電池で再エネ導入量を拡大
隠岐諸島は、島根半島の北方、40~80kmの日本海に浮かぶ、4つの大きな島からなる。最も大きな島を島後(隠岐の島町)、西南の西ノ島、中ノ島、知夫里島の3島を島前と呼ぶ。これらを合わせた総面積は350km2で、約2万3000人が暮らしている(図1)。
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「太陽光+蓄電池+EV」で交通のゼロエミ達成
電気バスを再エネ100%で毎日6便運行
東京都羽村市は、都心から西へ約45km。武蔵野の面影を残す雑木林が残る一方、日野自動車など工場も多く、住宅地と工業地域がバランス良く配置されている。羽村市役所は、JR青梅線の羽村駅と小作駅のほぼ中央にあり、両駅と市役所間を電気バス「はむらん」で結んでいる。羽村市が運営するコミュニティバスだ(図1)。
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太陽光の大量導入で「大型蓄電池市場」が離陸へ
新市場をリードするTMEICの蓄電池戦略(後半)
大型蓄電池システムへの期待が高まっている。出力の変動する太陽光発電の急速な普及によって、系統安定化のために不可欠になりつつあることに加え、導入コストの低下に伴い、企業が需要のピークカットに活用する動きも出てきた。メガソーラー(大規模太陽光発電所)向けパワーコンディショナー(PCS)で高いシェアを持つ…
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動き出す再エネ併用型「大型蓄電池市場」
新市場をリードするTMEICの蓄電池戦略(前半)
大型蓄電池システムへの期待が高まっている。出力の変動する太陽光発電の急速な普及によって、系統安定化のために不可欠になりつつあることに加え、導入コストの低下に伴い、企業が需要のピークカットに活用する動きも出てきた。メガソーラー(大規模太陽光発電所)向けパワーコンディショナー(PCS)で高いシェアを持つ…
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九電、太陽光大量導入に備え、実証プロジェクト本格化
蓄電池の最適配置に向け実証データを収集
2015年11月、九州電力の川内原発2号機は、原子力規制委員会の最終検査を終え、営業運転を開始した。新規制基準下での原発の営業運転は、川内1号機に次いで2基目。これで川内原発は、全国の原発に先駆け通常の運転態勢に入った。