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本記事は、応用物理学会発行の機関誌『応用物理』、第84巻、第4号に掲載されたものの抜粋です。全文を閲覧するには応用物理学会の会員登録が必要です。会員登録に関して詳しくはこちらから(応用物理学会のホームページへのリンク)。全文を閲覧するにはこちらから(応用物理学会のホームページ内、当該記事へのリンク)。『応用物理』の最新号はこちら(最新号の概要PDF)。

はじめに

 真夏の炎天下を歩いていると、この熱(この場合は、気温と体温との温度差)を電気として再利用できればなんとすばらしいことか、と思われた経験のある方も多いかと思います。熱を電気に変える素子である熱電変換素子の性能がもっと向上し、フレキシブルかつ伸縮性に富む材料であれば、体温を熱源として電力を発生させて、身につけている情報機器端末を駆動する夢のような電力源ができるかもしれません。

 高性能な熱電変換素子材料を設計するうえで、温度差を与えたときに発生する電圧の大きさであるゼーベック係数の大きさと符号は、とても重要です。効率よく熱電変換素子を作るには、温度差をつけた際に正の電圧を発生する正のゼーベック係数をもつ材料と、負の電圧を発生する負のゼーベック係数をもつ材料を並列に並べる必要があります。

 筆者は、単層カーボンナノチューブ(Single Wall Carbon Nanotube:SWCNT)に関する一連の研究の流れにおいて、そのゼーベック係数の正・負や大きさを電気二重層キャリヤ注入という手法で自在に制御できることを明らかにしました。SWCNTは、ほかの材料を圧倒する機械的・化学的安定性を備えます。また、フレキシブル性にも伸縮性にも富みます。もしかしたら、将来、先ほどの夢のようは話を実現する鍵となる材料となっているかもしれません。ここでは、筆者がSWCNTのゼーベック効果を制御する研究に至った経緯も含めて、その技術について紹介します。