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 前回まで製品安全の新規格「IEC 62368-1」の基礎となっているHBSE(Hazard Based Safety Engineering)の概念や、エネルギー源と製品に関わる人の分類、その間に入ってエネルギー伝達を防ぐセーフガードについて解説しました。新規格が提供する傷害防止策の概要は、理解いただけたと思います。

 今回は、従来規格の「IEC60065」「IEC60950-1」から新規格への移行に対応するに当たって必要な具体的な情報として、各章ごとに新たに規定された試験項目、試験方法や目的などが異なると思われる試験、およびそれらに関連して今までは使われなかった試験器具や測定器などの主なものを中心に紹介します1)。IEC 62368-1と従来規格の差分を検討される方や、従来規格の試験経験をお持ちの読者は試験対応の準備の参考にしてみてください。なお、以下で参照している箇条番号などはIEC 62368-1, Edition 2.0, 2014-02 に対応しています。

1) IECEE CB Schemeで使用されるTest Equipmentの公式リストは、こちらの「OFF」又は「TRON」を参照のこと。http://www.iecee.org/ctl/equipment/html/ctl_testing_index.htm

■5章:感電(Clause 5 - Electrically-Caused Injury)
5.2.2.4 ES Classification - Single Pulse (Single Pulse Limits):
 感電の要因となる電気エネルギーを3つのクラス(ES1/2/3)に分類する際、測定対象の電圧波形が単独パルスであった場合の電圧・電流のリミットが新たに規定されました。同様に、繰り返しパルスについても5.2.2.5項で規定しています。測定テクニックとしては従来の電圧測定・接触電流測定と同様ですが、従来明確な規定がなく曖昧だった波形に対するリミットが明示されました。

5.4.4.1 T.9 Glass Used as Solid Insulation:
 ガラスを絶縁として使用する場合、強度をT.9のGlass Impact Testで評価します。

5.7.2 Touch Current Networks (IEC 60990, Fig.5):
 タッチカレント測定には人体のインピーダンスを模擬する測定回路を使用します(図1)。その際、ES1リミット内の電流の測定にはIEC 60990のFig. 4(Reaction/Perception用:従来の規格で使用していた回路)を、ES1を超えES2リミット内の電流の測定にはIEC 60990のFig. 5(Let-go用)を使用して測定することになりました。

図1 人体のインピーダンスを模擬する測定回路
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5.7.5 Protective conductor current (IEC 60990, Sub-Clause 8):
 保護導体(接地線)に流れる電流を内部インピーダンスが十分低い通常の電流計にて測定します。IEC 60950-1ではTouch currentが規定値を超えた場合に測定されていましたが、該当する場合AV機器にも適用されます。