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 「医療データを活かした疫学研究と分析の必要性 ―リアルワールドデータと医療、産業、政策―」――。こうしたテーマで、膨大な健康データがどのように利活用されているのかを語ったのは、京都大学 大学院医学研究科・薬剤疫学 教授の川上浩司氏。メディカル・データ・ビジョン(以下、MDV)が2015年5月15日に開催した大規模データベースセミナーのトップバッターとして登壇した。

京都大学 大学院医学研究科・薬剤疫学 教授 川上浩司氏
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 川上氏によれば、医学研究は生命科学とは別物で、医療研究は「患者や社会が困っていることをどのように解決するかに尽きる」とのこと。医療現場で起きていることを「リアルワールドデータ(医療情報データ)」と定義するのであれば、それらをどのように活用するかが「極めて重要な問題だ」と説明した。そして、「医学研究=データの解析あるいは人を対象とした臨床研究」であると位置づけた。

 これを踏まえて世界の医学的手法の発展を見てみると、1940年代の抗生物質の発見にはRCT(Randomized Controlled Trial:ランダム化比較試験)による臨床試験の発明が大きく起因していると川上氏はいう。そして、カプランマイヤー曲線が発明された1950年代や、臨床試験がフェーズ1、フェーズ2、フェーズ3に分かれた1960年代を経て、1980~90年代に入るとITの進歩によってデータ解析が登場。既存の情報を解析することで医療や医薬品の効果を測定する手法が発展した。

 そして21世紀に入り、ITの進歩でさまざまな情報がデータベース化されると医学の流れは一気に変化。1940年からの70年間における医学の発展において「現在は一番大きな転換期を迎えていることは疑いない」ことであり、データベースの登場は「医療の技術だけでなく考え方も変えようとしている」(川上氏)。

 そしてここ数年、大規模データベースができたことで「データ解析による観察研究の方が臨床試験よりもいろいろなことが分かるのではないか」という見方が世界中で支持されつつある。これはつまり「もうRCTの時代ではない」ということであり、臨床試験で何億円をかけるよりも、既存データをしっかり活用する方が費用対効果も情報精度も高いということ。「世界的に、臨床試験からどう脱皮すべきかという議論が去年から始まっている」(川上氏)。