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本記事は、日本機械学会発行の『日本機械学会誌』、第118巻第1158号(2015年5月)に掲載された記事の抜粋(短縮版)です。日本機械学会誌の目次、購読申し込みなどに関してはこちらから(日本機械学会のホームページへのリンク)

[1]大学における技術倫理教育の実際

国内大学工学部の倫理カリキュラム

 国内大学工学部の倫理カリキュラム52事例(堤元技術倫理委員長の収集、整理による)を分析した結果を示す。

 まず、講義名称だが、「技術者倫理」(「科学技術者倫理」を含む)および「工学倫理」の二つの名称が全体の3/4を占める。その対象学年は、3・4年を合わせると半数を超える一方、1・2年の合計は1/4に届かない。単位数は圧倒的に2単位制が多い(76%)が、90分×4回の講義を念頭に置く試みもあった。

 使用テキストは、市販教科書を使用した講義が半数にのぼる一方、講師自作資料で行うケースも1/3ほどある。講師は、学内(工学部)教員の担当事例は24件、学外教員担当の事例は10件で前者が多い。一方、同じ学内の非工学系(主として哲学系)の教員が講師となる事例も多い。

 産業界の経験が深い講師が担当する講義名称はすべて「技術者倫理」であるのに対し、大学あるいは研究系の職の講師の場合は「技術者倫理」と「工学倫理」が半分ずつである。また、産業界技術者の場合はテキストを自作する事例が相対的に多いのに対して、大学、あるいは研究職の場合は市販教科書が多い。

52事例のシラバスの特徴

 52の講義のシラバスを整理すると、次のような特徴を抽出できる。まず、倫理学、技術論などは技術倫理の基盤知識という位置付けになっており、学生が技術倫理を学ぶ意味を知らせる目的もある。また、倫理は規範であり体系があり、その体系は知識として教える必要がある。しかし、技術倫理に関係する規範として完全にオーソライズされたものはないので、講師が各講義目標を踏まえて必要な規範体系を教えることとなる。

 さらに、技術者が倫理的な行動のために必ず知っておくべき法規がある、と認識されているようで、製造物責任法、環境法関連の法などが多くの講義で取り上げられている。他にもさまざまな事例が取り上げられ、学生の理解を促している。技術倫理は単なる知識にとどまっていては価値がない、実際の業務の中で発動されなければならないとの意図で、判断、行動の実践に関する教育も多い。