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講演する元木氏
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コーパスを作り創造的発見につなげる

 IBM社はこうしたWatsonの能力を、医療・ヘルスケア分野で(1)研究開発、(2)診断支援、(3)顧客サポート、という三つの場面に生かす狙いだ。

 (1)の研究開発では、大きく2つの取り組みが実用段階に入った。「Watson Discovery Advisor(ディスカバリー・アドバイザー)」と「Watson Clinical Trial Matching(クリニカル・トライアル・マッチング)」である。

 このうち、Watson Discovery Advisorは「新しいがん治療薬の開発などに使われ始めた」。例えば、米Baylor College of Medicineとの共同研究では、p53と呼ばれるがん抑制遺伝子に作用(活性化または不活性化)するたんぱく質の候補の絞り込みに、Watsonを利用した。p53に関する7万本にも及ぶ科学論文をWatsonで分析し、研究対象として有望な6つのたんぱく質を特定したという。p53、およびそれに作用する物質の相関図(ツリー図)をWatsonが作成した。一般に、がん治療薬の候補となるようなたんぱく質は「年に1個見つかればよいとされるほどで、今回の研究ではWatsonを使う手法が有効に機能した」。

 Watson Discovery Advisorの中核を成すのは、「Watson Corpus」と呼ぶコーパス(知識ベース)の構築とその活用だ。ここには、膨大な数の医療文献や化学物質データベース、ゲノム情報、特許情報などに加え、薬の副作用に関する情報や医療機関が持つさまざまな臨床情報を統合する。Baylor College of Medicineとの共同研究では、このコーパスをがん遺伝子の研究に適用。感染症や毒性に関する製薬会社との共同研究などにも活用している。