回生ブレーキの余剰電力を駅で活用

 一方、省エネ対策の新しい試みが、電車の「回生電力」を駅の付帯用電力にも活用する仕組みだ。回生電力とは、減速時に駆動用モーターを発電機として機能させることで、運動エネルギーを電気に変換したもの。回生電力を生み出しつつ制動する「回生ブレーキ」は、電車のほか、電気自動車(EV)やハイブリッド車などモーター駆動車の省エネ技術として普及している。ただ、通常は、回生電力を電動車両のモーター駆動に活用するシステムが一般的。東京メトロの場合、駅の照明や空調などにも利用していることが大きな特徴だ。

 同じ回生ブレーキでも、電車とモーター駆動の自動車では、その仕組みがやや異なる。EVなどのモーター駆動車はもともと大容量の蓄電池を搭載しているため、制動時の回生電力は蓄電池に充電しておき、同じ車のモーター駆動に使う。一方、電車の場合、蓄電池を持たないので回生電力はパンタグラフを通じて電車線(き電線)に送電(逆潮)し、ほかの電車のモーター駆動に使われる。

 こうした仕組み上、電車における回生ブレーキ利用の場合、回生電力を電車線に戻せるのは、近くに供給に見合う電力の負荷、つまり加速している電車が走っていることが前提になる。従って、近くに電車が走っていなかったり、走っていても慣性走行中だったりした場合、電力需要がなく、ブレーキ時に回線電力を戻せない。その場合、機械的なブレーキによって運動エネルギーを熱として捨てることになる。

 そこで、東京メトロは、使い切れない回生電力を駅の付帯用電力に利用するため、「駅補助電源装置」を導入した。同装置は、直流を交流に変換するインバーター(周波数制御装置)で、電車線(直流1500V)と、付帯用電力を供給する構内送電網(交流210V)をつないでいる。駅補助電源装置によって電車線の負荷に付帯用電力が加わったことで、これまで電車の運行状況によって電車線に戻せなかった回生電力の一部が有効利用できるようになった(図8)。

図8●電車の回生電力(直流)を駅補助電源装置で低圧(交流)に変換し、駅の設備に使う。
(出所:東京メトロ)
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