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市民に担い手になってもらう

 大川氏は「2012年に米国でJeff Speck氏の『Walkable City』という本が発売された。歩きやすさを指標として、都市ごとに点数化したもので、歩きやすい街は国民総生産や教育水準も高く、健康状態も良好という。英国にもfootpathがある。みんなが自由に歩ける小道を全土にめぐらしてきた。自治体もエリアの資産や強みがどこにどれだけあるか把握し、マーケティングをするべきだ」とする。

スポルツ代表取締役の大川耕平氏
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 自治体の健康アプローチの成功例として、大川氏は埼玉県坂戸市の「葉酸プロジェクト」を挙げた。市が女子栄養大学と協働し、動脈硬化などの予防効果があるという葉酸を、地元産の野菜などから摂取してもらおうという取り組み。葉酸入りパンなどの商品を開発したり、葉酸が摂取できるメニューや商品を提供する地元の店舗を紹介した地図を作ったりしている。「地域の特性を生かして、地産池消と健康づくりを同時に推進する優れた取り組みだ」(大川氏)。

 また、自治体の健康づくりプログラムが単発の企画で終わらず、地域に根付いていくために必要なこととして、大川氏は「コミュニティーをデザインし、リーダーになれる人を見つけて、主体的な活動が生まれるモードに持っていくこと。ティーチングではなく、コーチングの考え方で取り組むべき」とした。

 杉浦氏のプログラムでも、インストラクターを「先生」ではなく「コーチ」と呼んでいるという。同氏はこのコーチを支えるサブリーダーを参加者の中から育てている。「プロのインストラクターだけでは参加者は『コーチは若くて元気でスポーツマンだから』と共感しない。みんなと歩きながら『私も以前は糖尿病で大変だったけど、今はウォーキングのおかげで元気になったよ』と語れる人がいたほうがいい」(杉浦氏)。

 参加者のモチベーションを維持するため、サブリーダーを中心に、AED(自動体外式除細動器)の講習会や、街のパトロールを兼ねた「見守りウォーキング」なども提案している。「これからは特に、高齢者に“地域の担い手”になって、利他の欲求を満たしてもらいたい」(杉浦氏)。サブリーダーは、なるべくたくさんの人が担当できるよう、曜日ごとの交代制にしている。また、高齢者中心のプログラムでは、以前どんな会社に勤めてどんな仕事をしていたかなどはお互いに語らないというルールを設け、参加者同士が対等な立場でプログラムを楽しめるようにしている。