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 これまでの5回の連載で、医師・電子カルテベンダー・患者のそれぞれの視点から、電子カルテの現状の問題点や改善案について言及してきました。各テーマにおけるRe-Design構想を簡潔にまとめると以下になります。

 ・導入時、不安よりも期待が大きい電子カルテへ
 ・個別最適化から共通プラットフォームとしての電子カルテへ
 ・臨床支援や業務効率化に寄与する電子カルテへ
 ・患者とのコミュニケーションツールとしての電子カルテへ

 これらを実現するためには、医師と電子カルテベンダー共に多くの努力が必要になります。特に、個別カスタマイズからの脱却においては、医師の意識変革と電子カルテベンダーの常に最適解を提供していくという確固たる覚悟が必要になります。他の業界の事例としては、システムに業務を合わせることによって、半強制的に業務を見直すきっかけにしているところも多くあります。

 大規模な病院では、その病院のルールや慣習に合わせたシステムを導入することによって、品質水準を一定化していると思います。診療所では基本1人~数人で利用するものなので、個別最適を追求することは否めないのですが、他の診療所との共通プラットフォームを利用することによるメリットを医師に訴求することができれば、いずれ潮流は変わると考えています。

電子カルテを取り巻く環境の変化

 少し話は横道にそれますが、さまざまな外部環境の変化によって電子カルテをとりまく状況は大きく変わってきました。本記事の連載中にも、遠隔医療を原則として認める方針や、訪問專門の診療所解禁といった厚生労働省の発表がニュースとして流れました。こういった変化に対応するためには当然システムによる支援が必要になります。

 2015年7月15~17日に開催された「国際モダンホスピタルショウ2015」でも、多くの電子カルテベンダーが地域包括ケア向けのシステムを紹介していました。また、クラウドを活用してモバイル端末で診療情報を参照するツールや、検査画像を持ち運ぶ仕組みなども紹介されていました。このように、病院や診療所の外で診療データを活用・共有する体制が、制度・システムの双方から整えられてきています。

 もう一つ、国際モダンホスピタルショウの中でよく取り上げられていたテーマに、診療分析・経営支援システムがありました。DWH(Data Warehouse)/BI(Business Intelligence)という用語が多く飛び交っていたという印象があります。主に病院向けの製品が主体でしたが、病院内の各システム(電子カルテ、医事会計システム、部門システムなど)のデータを集約して分析し、経営改善や医療の質の向上を図るための情報提供を支援するものです。

 このようなシステムが出てくるというのは、病院や診療所において電子カルテをはじめとする各システムが導入されたことによりデータの蓄積・共有が進み、次はそのデータをもっと活用しようという風潮になってきているのだと推察します。もともと論理的思考力の高い医師であれば、このようなデータを使いこなし、自らの診療や研究、経営に生かしていくことは容易なことなのではないでしょうか。

 このように、同じ地域の医療機関で情報を共有したり、病院内のデータを分析したりする仕組みが整いつつあることは、患者にとっても良い環境になってきていると思います。ですが、これらの仕組み・システムはもう一段階上のステップに行く余地が残されていると考えています。