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日経ものづくり タグチメソッド

タグチメソッド

新シリーズ 
第1回
試行錯誤なしに設計を最適化
初期段階の作り込みで手戻り減らす

立林 和夫
富士ゼロックス 開発管理本部 開発管理部 品質工学チーム長

ノイズのない理想状態を仮定して目標とするシステムの在り方を考える従来の開発手法。設計/改良,試作,テスト,問題分析というサイクルを繰り返す。試行錯誤を伴うため,手戻りが多い。こうした手戻りを激減させ,開発効率を向上する手法として注目されているのがタグチメソッドだ。今回は,意義と基本概念について解説してもらう。 (本誌)

 今から半世紀も前に,INAX(当時の伊奈製陶)で,ある先駆的な実験が行われた。同社は,トンネル釜と呼ばれる焼成器を欧州から購入してタイルを焼いていた。その釜の内部の温度ばらつきが大きく,焼成後のタイルの寸法,ツヤ,反りがばらついて悩んでいた。
 品質管理で一般に行われる対策は,ばらつきの原因である釜の内部の温度ばらつきをなくすことだが,彼らが行ったことは,温度ばらつき対策ではなく,タイルの材料配合の改良だった。結果として,材料をある配合条件にしたら,焼け具合が均一化し,寸法,ツヤ,反りのばらつきが激減した。
 ここで行われた「手品のような方法」を他の技術分野でも使えるようにしたいと,この実験を指導した統計学者の田口玄一氏が数十年間をかけてつくり上げたものが「タグチメソッド」(日本では「品質工学」)と呼ばれる工学体系だ。
 現在,500社を超す日本企業が活用し,欧米,中国,韓国でも活用され始めた。タグチメソッドを研究する日本の品質工学会の発表会には1000人を超す参加者が集まるほど,強い注目を浴びている。

何が注目を浴びているのか
 日本で製造の空洞化が叫ばれて久しいが,開発の空洞化も既に始まっている。開発費用を削減するために,国内で行ってきた開発を近隣諸国に持ち出しているためだ。例えば,中国の技術者の賃金は,日本の技術者の1/10~1/5であり,近隣諸国で開発する方が安い。このままでは,何年か先には多くの日本の開発技術者が失業してしまうだろう。
 日本人技術者の賃金をあまり大きく下げずに開発費用を低減するには,開発の生産性を劇的に改善する必要がある。タグチメソッドはこのための切り札として注目を浴びている。
 タグチメソッドを使って開発すれば,設計作業の効率が飛躍的に向上する。しかし,注目を浴びているのはそこではない。開発の初期段階で品質を作り込むことができ,品質問題による開発の手戻りが激減する点なのだ。
 図は多くの企業が採用している開発方法だが,このサイクルを何度も回せば,開発効率が必然的に悪くなる。タグチメソッドによって最初の設計で品質を作り込めば,サイクルの回数が減り,開発効率が劇的に向上するのである。

日経ものづくり 特報
図●デバッグサイクルによる開発