セイコーエプソンは,電子部品の量産工程に
インクジェット技術を初めて適用した。具体的には,プロジェクター向け液晶パネルの配向膜の形成に利用した。従来の製造方法で配向膜を形成した場合に比べて,パネルの表示画質が大きく向上したほか,環境負荷の低減にもつながった。インクジェット技術は今,次世代の製造技術としてその工業応用の動きに注目が集まっている。同社は今回の量産工程への適応で得たさまざまなノウハウを生かし,さらに技術の水準を高めていくことで,ほかの分野へのインクジェット技術の応用を加速させたい考えである。本稿では,今回の液晶パネルの配向膜形成を実現した技術の詳細と,今後のインクジェット技術の応用展開について,同社の技術者に解説してもらう。(小谷 卓也=本誌)
鈴木 克己
セイコーエプソン
IJ工業応用開発部 IJプロセス開発グループ グループリーダー
我々は,インクジェット技術を電子部品の量産工程に適用した。具体的には,プロジェクターの表示素子として用いる,高温多結晶Si TFT液晶パネルの配向膜を形成する工程に利用した。この液晶パネルは,既に2005年4月に量産出荷を始めている。量産工程にインクジェット技術を採用するのは,これが初めての事例となる。
インクジェット技術は,真空装置を必要とするSi系半導体などの製造技術に取って代わる,次世代の製造技術として注目が集まっている。真空装置が不要になるほか,材料の利用効率が高く,製造期間が短く生産性が高いなど,より低コストで製造できる可能性を備えるためである。