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 昨年春,名野隆夫は三洋半導体を定年退職した。名野はさまざまな顔を持っていた。社内ではちょっとした有名人だった。「アナログ大学院」と呼ばれる研修制度を主催し,100人を超えるアナログ技術者を育成した。売却交渉中の同社に投資ファンドが食指を動かすのは,電源ICやオーディオICなどアナログ系半導体の設計力に定評があるからだ。その実力を陰で支えてきた一人が名野である。

 社外では「BSIMの名野」で通っている。米University of California, Berkeley校が回路シミュレータ用に開発したトランジスタのモデル「BSIM(Berkeley Short-Channel IGFET Model)」について語らせれば,国内で右に出るものがいないほどだ。誰に言われたわけでもなく,独力で文献をあさり,プライベートの時間を割いて勉強した成果である。