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 「まだ本当の意味でのデジタル家電は,ほとんど存在していないと思っているんです。だからベンチャーにも十分にチャンスがある」

 インターネット接続事業などを手掛けるフリービットの石田宏樹社長は,現在のデジタル家電市場についてこう言ってはばからない。

 「確かに家電のデジタル化は進んでいます。でも,それを使うユーザーの振る舞いの変化を意識した機能が入っていない。特にインターネット・ユーザーのニーズを汲み取っていないのではないでしょうか」

 自社で取り組みたいネット・サービスを実現できるデジタル家電がない――。こうした思いを抱く石田社長がたどり着いた答えが“自社で作る”だ。もちろん,大手メーカーと組んで,独自仕様の機器を開発するという選択肢はある。だが,最終的には「自社で作ったほうが早い」という結論に至った。

すべてのデジタル家電を「Webサーバー」に

フリービットの石田社長
図1 フリービットの石田社長

 石田社長が打ち出したデジタル家電の姿。それは,すべての家電にWebサーバーの機能を持たせるというものだ。フリービットは,2009年3月11日に開いた決算説明会で家電に組み込む通信用ソフトウエア「ServersMan mini」を披露した。既存のIPネットワーク上に仮想的なネットワークをセキュアに構築する独自の通信技術「Emotion Link」を使う。このソフトウエアを組み込んだ家電はネットにつなげるだけでWebサーバーとして機能する。説明会では,ビデオ・カメラの試作機をパソコン経由でネットにつなぎ,撮影した映像をストリーミング配信するデモを見せた。

 「ネット・ユーザーが本当に楽しみたいのは,例えばビデオ・カメラなら撮った映像をネットで配信する個人放送局でしょう。“撮りためる”ではなく,撮ったそばから生中継でその場で起きた出来事を伝えたい。家電をネットとつなぐ利点は,リアルタイムにユーザーの行動をネットに反映できることにある。それを簡単に実現できる機能が求められていると思う」。石田社長はこう話す。

 フリービットは2009年2月にデジタル家電ベンチャーのエグゼモードへの出資を決めた。同社と連携してデジタル家電を開発し,同年春にも製品化する。

米Pure Digital Technologies社の小型ビデオカメラ「Flip Video Ultra」
図2 米Pure Digital Technologies社の小型ビデオカメラ「Flip Video Ultra」
撮影した動画をYouTubeにアップロードできる。Webガジェットの1つ。

 フリービットの取り組みが示唆する将来像は,エレクトロニクス・メーカーでなくても容易にネット家電を製品化できる世界だ。同社は,エグゼモードに出資することで,その背後にある中国などの製造受託サービス(EMS)を活用するノウハウを手に入れる。日経エレクトロニクスが1000号記念特集のテーマとした「誰でもメーカー」の萌芽の一つである。

 これは,米国で広がる「Webガジェット」と呼ばれるネット家電を開発するベンチャー企業にも共通する動きだ。単に家電製品を作るだけではない。常にネット・サービスとの連携を意識し,あくまでサービス側の視点からデジタル家電を企画する。そのアイデアを,外部の開発者やEMS企業などと連携しながら数人の極めて少人数で具現化している。