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図1 「無印」ブランドの建売住宅
図1 「無印」ブランドの建売住宅
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 UGD(user generated device)時代の基準となるのは,究極の分業体制である。こうした分業化が進んだ業界の一つが建築業界である。図面を設計することができれば,実際の組み立ては大工や左官などが行う。つまりアイデアと設計の知識があれば,異業種からでも比較的容易に参入できる。そこで,小売業から建築業界に参入した良品計画の100%子会社であるムジネット取締役 住空間事業部長の高野 一義氏に,異業種から飛び込むことの良さや難しさなどについて聞いた。

――なぜ住宅事業に参入したのですか

高野氏 私たちは良品計画を,衣食住の提供をする企業だと考えています。住宅事業への参入を計画し始めたのは2000年ごろのことですが,当時,良品計画として衣と食は既に提供していました。そこで残るは住宅,ということだったのです。

――異業種からの参入となるわけですが,どのように事業を展開していったのでしょうか

高野氏 とにかくユーザーの声に耳を傾けようと考えました。従来の建築業界には,ユーザーの求める商品(家)がないと思っていたからです。私たちはもともと,「無印良品」というブランドで雑貨などを販売する小売りの会社。そのためユーザーに比較的近く,ユーザーの声には敏感な企業だと思っています。こうした姿勢で住宅事業にも臨みました。具体的には,弊社の「Muji.net」というWebサイトの会員から声を集めてコンセプトを決めました。例えば住宅事業に本格的に取り組み始めた2002年,20~30代の2000人の会員から声を集めました。そこからユーザーが求めている家は「長く使える家」だと考えました。「使っては壊す」ことを繰り返す家ではダメだと。こうした発想の家は,従来の建築業界にはあまりないですよね。その後も,新しいプロジェクトごとに1万人程度の会員から声を集めています。

――「長く使える家」という考えは,具体的にどういった家なのでしょうか

高野氏 「編集できる家」です。編集するとはつまり,子供の誕生や独立などのライフ・ステージに応じて,家の間取りを自由に変更できることを意味します。それを実現するため,「スケルトン」と「インフィル」という考えを取り入れました。スケルトンとは建築物の骨格ことで,インフィルとは動かせるもののことです。骨格はしっかり造るけれども,中は動かせるということです。それまでの家は,中身まで作り込みすぎていたと思います。

――評判はいかがでしょうか

高野氏 まだ,よく分からないというのが正直なところですね。2004年に最初の家を施工して以来まだ5年程度。顧客のライフ・ステージも,それほど大きく変わっていませんから。良さが伝わるには,ある程度の時間が必要だと思っています。

――住宅は,どのようにして販売しているのですか

高野氏 最初に施工して以来3軒目までは東京・有楽町の直営店で施工を実際に行っていました。直営店は今もありますが,現在は主にフランチャイズ制により住宅事業を運営しています。このため収益の上げ方は,コンビニエンス・ストアなどでよくある手法と同じです。入会金と月会費,そして1棟販売したときにいくらかの金額を頂く仕組みです。現在,利益はトントンといったところですね。実は,当初はネットを通じて販売していこうという考えもあったのです。でも,住宅事業では難しい。モデルハウスを建てるといったことをしなければ,なかなか顧客は来てくれません。

――異業種から参入することの難しさは何がありますか

高野氏 この業界の方に,弊社の取り組みを理解してもらうことに苦労しました。実際の家造りは,地元の工務店にお任せするわけですから。あと建築業界で特に顕著だと思うのですが,地域ごとの地場産業的な色合いが強く,全国展開が難しいこともあります。最近は理解して下さる方も増えてきました。

――設計などは簡単にできるものなのでしょうか

高野氏 その点に関しては,この事業に参入するときに,建築士の資格を持った人に来ていただきました。実は,私もその一人です。無印が家を建てると聞いたとき,面白いことができるのではないかと思った口です。この会社には,こうした人が多数いますよ。