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 「実践モジュラーデザイン」は,部品の種類に対して相対的に製品の多様化を図り,収益を改善するための「モジュラーデザイン(MD)」について,科学的・体系的に解説するものです。

 「トヨタ方式」はトヨタ自動車の強さの源泉とよくいわれるが,同社は製品開発面でも「部品共通化能力」において非常に優れることが,世界一に成長した源泉の一つである。製品の多様化を実現すると同時に,それと二律背反の関係にある部品種類数の削減を両立する能力だ。本連載で紹介する「モジュラーデザイン」(MD)は,この部品共通化に対して,体系的・科学的にアプローチする方法論である。

 世界規模で金融資本主義経済が破綻した今,ものづくりによる価値経済の復権が期待されている。足元の環境は厳しいが,夜明けが来たときには一番で飛び出せるように,足腰を鍛えておかなければならない。そこで,MDを基本にした新しいものづくり論が必要とされている。

製品アーキテクチャと競争力

 自動車産業の研究やものづくり論で著名な東京大学大学院経済学研究科教授の藤本隆宏氏は,次のように製品アーキテクチャ論を展開している。「製品はインテグラル(擦り合わせ)型とモジュラー(組み合わせ)型の二つの特性に分かれる。ビジネスのスタイルはクローズ(囲い込み)とオープン(業界標準)の二つがある。製品は(1)インテグラル型でクローズ, (2)モジュラー型でクローズ, (3)モジュラー型でオープンのどれかに属する。日本は歴史的に(1)の擦り合わせ寄りの製品が強いので,日本の製造業はとりあえずこの領域で勝負せよ」。

 日本の擦り合わせ型製品は,なぜ強いのか? 情報家電のようなモジュラー型製品では,日本製品と他国製品の間で品質に大差がなく,どうしてもコスト土俵の勝負になる。しかしコスト土俵では,労働力コストの高い日本が勝つのは容易ではない。一方,自動車のように,さまざまな気象条件や道路状況で使われる,複雑な構造を持った擦り合わせ型製品は品質を確保することが難しいので,品質土俵での勝負になる。日本は1960年代のTQC活動以来,品質に磨きをかけてきていることから,他国が後から来て日本の歴史を乗り越えることは簡単ではない。これが,日本の擦り合わせ型製品が強い理由である。

〔以下,日経ものづくり2009年4月号に掲載〕
図●日本製品の位置取り戦略

日野三十四(ひの さとし)
モノづくり経営研究所イマジン 所長,日本IBM 顧問:1968年に自動車メーカーに入社。1980年にトヨタ自動車のベンチマーキング開始。1988年にトヨタの部品共通化能力を超える手法を目指し,MDの研究を開始。2000年に経営コンサルタントとして独立。2002年に『トヨタ経営システムの研究』(ダイヤモンド社)を出版(韓,台,米,タイ,中で翻訳出版)。2003年に日本ナレッジ・マネジメント学会から研究賞受賞。2003年から日韓の重工業や電機メーカーなどでMDをコンサルティング。2007年に“製造業のノーベル賞”といわれる米Shingo Prizeから研究賞受賞。2008年から日本IBM顧問。