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「勝つ設計」は,日本のVEの第一人者である佐藤嘉彦氏のコラム。ただ安さばかりを求めて技術を流出し,競争力や創造力を失った日本。管理技術がこれまでの成長を支えてきたという教訓を忘れた製造業。こうした現状を打破し,再び栄光をつかむための製品開発の在り方を考える。
図●勝つ設計の3カ条
使用者に喜びを与え,新しいシステム,仕組み,インフラを提供し,造りやすさ/組み立てやすさを勘案する。

 この春より,新コラム「勝つ設計」を担当することになった。私の経歴は下欄に記した通りだが,サラリーマン時代に国内1000工場,海外200工場を見て回るなど,取引先の「体質改善」を長くなりわいにしてきた。独立後の現在も,15の企業の体質改善や製品開発に携わっている。本コラムでは,その経験と思い入れを遺言のように書き残していきたいと思う。

 連載開始に当たって,読者には,ありきたりの四文字熟語だが「優勝劣敗」という言葉を贈りたい。優れたものが勝つ,そして劣るものが負ける─。実は,私は,この言葉の深みを幾度となく味わってきた。特に重要なのは,後者の方だ。「前より良くなった」は競合相手(Competitor)に対して勝ったといえないが,「劣って」いては勝ち残れない。つまり,「優」が勝ち。常にCompetitorと勝負するビジネスの世界で勝つためには,相手より優れていなければならないのだ。

 もう少し分かりやすく話をすると,その商品が世の中にある限り,「1番は生き延びられるが,2番では生き延びられない」ということである。これが私の持論だ。果たして,読者の会社の製品は世界で1番だろうか。1番なら生きられるけれど,2番ならいずれ淘汰される。この新コラムは,「前より良くなった」で満足する人には似合わない。世界一を目指す人のためにあることを,まず申し上げておきたい。

 さて,今回の大恐慌だが,金融のせいばかりではなく,ものづくりにも責任の一端があると考える。我々が忘れていたこと,すなわちものづくりの原点である「創造による新商品開発」を怠ってきたことが傷を大きくした。市場に対し,従来商品の目先の変更で安易に対応してきたことのツケが今,回ってきたのである。

 新コラムではその原点について大いに触れ,日本の製造業復活の一助を担いたい。そして,勝つ製造業にしたい。1年間,こんな思い入れで経験をつづっていく。読者の皆さんに,ご愛読いただければ幸いだ。

〔以下,日経ものづくり2009年4月号に掲載〕
佐藤嘉彦(さとう・よしひこ)
VPM技術研究所 所長:1944年生まれ。1963年に,いすゞ自動車入社。原価企画・管理担当部長や原価技術推進部長などを歴任し,同社の原価改善を推し進める。その間に,いすゞ(佐藤)式テアダウン法を確立し,日本のテアダウンの礎を築く。1988年に米国VE協会(SAVE)より日本の自動車業界で最初のCVS(Certifi ed Value Specialist)に認定,1995年には日本人初のSAVE Fellowになるなど,日本におけるVE,テアダウンの第一人者。1999年に同社を退職し,VPM技術研究所所長に就任。コンサルタントとして,今も,ものづくりの現場を回り続ける。