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「実践モジュラーデザイン」は,部品の種類に対して相対的に製品の多様化を図り,収益を改善するための「モジュラーデザイン(MD)」について,科学的・体系的に解説するものです。

 今月は,モジュラーデザイン(MD)を採用して成長を続けている,先進企業3社の実例を紹介する。

Scania社,不況の2008年に利益率10%

 図は,スウェーデンの商用車メーカーScania社が造っているトラックとバスである。少数のモジュラー・コンポーネントを準備しておき,それらの組み合わせを変えることによって,外観は異なってもほとんど同じ部品で製品を製造している。Scania社はデンマークのLego社と共同でMDの世界キャンペーンをしており,本気で自社の製品を「LEGOブロック」にしようとしているのである。

 Scania社のMDを詳しく紹介した文献を基に,以下に重要なポイントを解説する。

◆モジュール同士がぴったり合うような標準化が難問
 Scania社のトラック用モジュールは,3タイプの運転室,4タイプのエンジン,4タイプの変速装置,15タイプの車台があった。同社は,これらのモジュールがぴったり合うように標準化するのが難問だといっている。ただし,この難問を解決したとも言外にほのめかしている(第4回で詳しく解説する予定)。

◆顧客注文に応じた設計はしない
 トラックは個別受注製品に近いが,同社はあらかじめ予測できる顧客条件をすべてカバーした詳細なモジュール仕様を定義した。どのような要望でも,顧客注文に適応した仕様をこのマトリックスから「引き出す」という。

◆製品の多様化を絶対的に尊重
 部品の種類を減らす手っ取り早い方法は,製品の多様性を減らすこと。しかし同社は,それは顧客をふるいにかけて収益を減らすことにほかならないから,そのようなやり方はしないといっている。

〔以下,日経ものづくり2009年5月号に掲載〕

図●スウェーデンScania社のモジュール化
(出典:Scania社Webサイト)

日野三十四(ひの・さとし)
モノづくり経営研究所イマジン 所長,日本IBM 顧問
1968年に自動車メーカーに入社。1980年にトヨタ自動車のベンチマーキング開始。1988年にトヨタの部品共通化能力を超える手法を目指し,MDの研究を開始。2000年に経営コンサルタントとして独立。2002年に『トヨタ経営システムの研究』(ダイヤモンド社)を出版(韓,台,米,タイ,中で翻訳出版)。2003年に日本ナレッジ・マネジメント学会から研究賞受賞。2003年から日韓の重工業や電機メーカーなどでMDをコンサルティング。2007年に“製造業のノーベル賞”といわれる米Shingo Prizeから研究賞受賞。2008年から日本IBM顧問。