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 プレス成形といえば,金型は絶対に必要なもの,そんなことはものづくりの常識中の常識。だと思っていたら大間違い。なんと,金型を使わないでプレス成形をしている会社があったのだ。

 金型が要らないから,正確にいえばプレス成形ではない。いやいや,金属の板を望む形状に延ばして成形し,結果はプレスと同じになるのだからプレス成形といえなくもないが,どう呼んだらいいのだろう。えいっ,そんなことはどうでもいい。とにかく金型を使わないで3次元形状を成形するのだから,すごい。そうだ,すごい成形方法といえばいい。

 筆者はそう叫んだのだが,開発した会社が付けた呼び名は「ダイレスNCフォーミング」。確かにダイ(型)レスだし,NC制御だし,成形加工だ。でも,そうアッサリと呼んでしまってはもったいないくらいに感動する成形方法である。金属の板が固定され,先の丸い工具がほとんど音もなく板に接しながら動くとそこが盛り上がってくるのだから,何やら手品を見ているような感覚がする。そうか,この会社はプレス装置製造で有名なアミノ(本社静岡県富士宮市)だから,「アミノ・マジック」と呼ぶことにしよう。

 お金そのものを材料にして産業化したウォール街。そこでエリートたちが考案した金融工学なんてすぐに化けの皮がはがれたインチキ工学だが,どっこい,このアミノ・マジックはウソでもインチキでもない,まさに本物のものづくり技術なのだ。

〔以下,日経ものづくり2009年6月号に掲載〕

音もなく,工具がすそ野に沿って動いている
まさに造山運動。

多喜義彦(たき・よしひこ)
システム・インテグレーション 代表取締役
1951年生まれ。1988年システム・インテグレーション設立,代表取締役に。現在,40数社の顧問,NPO日本知的財産戦略協議会理事長,宇宙航空研究開発機構知財アドバイザー,日本特許情報機構理事,金沢大学や九州工業大学の客員教授などを務める。