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中小企業が独自製品を開発する際にぶつかる大きな壁は二つある。一つは,自社が開発した技術の知的財産権の確保。つまり,特許の取得だ。もう一つが開発資金の調達。試作レベルならまだしも,量産するためには準備しなくてはならないことが山ほどある。製品を発売して売り上げとして収入を得る。それまでの資金を用意できなければ,独自製品の実現はおぼつかない。

飯田吉秋 アイ・シー・アイデザイン研究所代表取締役
写真:今 紀之

「またか! どうして分かってくれないんだ」

 アイ・シー・アイデザイン研究所(ICIデザイン研究所,本社大阪府守口市)の飯田吉秋は,先ほど届いたばかりの封書を開くなり,こう毒づいた。「今度こそは」という期待が小さくはなかっただけに,落胆は大きい。自然と,封書を握る手に力が入る。その封書の差出人は特許庁。中に入っていた書類には,「拒絶理由通知書」という文字が刻まれていた。

2度の拒絶通知

 飯田は,中小企業としても知的財産権対策が必要だという考えを強く持っている。せっかく心血注いで開発した製品でも,発売した途端に安価なコピー商品が出回っては太刀打ちできなくなるからだ。事業としては失敗したが,偽札識別器でも特許を取得しており,さらに基本部品であったプリズムについては,ある仕掛けを施していた。

 「実はあのプリズム,機能だけを考えれば,もっと簡単に成形できる形状にできたんですが,意識的に成形が難しい形状にしてあったんです。もし,コピー商品を造ろうとして,あのプリズムの形状を忠実に再現しようと思ったら,金型代が高くなる。そんな製品が出回ったら,今度は本来の単純な形状でこっちが生産すれば,コスト的にも勝負できるというわけです」。

 今,開発を進めている飲み口(飲料補助具)のスリット構造についても,同様の対策が必要だと飯田は考えていた。まず第一に,特許の取得。そして,「詳細は明かせないんですが,形を単純にコピーしてもウチが造っている製品とは決して同じにならないような工夫がしてあるんです」という。

〔以下,日経ものづくり2009年7月号に掲載〕