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「実践モジュラーデザイン」は,部品の種類に対して相対的に製品の多様化を図り,収益を改善するための「モジュラーデザイン(MD)」について,科学的・体系的に解説するものです。

 何事も活動の初めに目標を設定しなければならないが,具体的な目標を設定する前に,二つのことを終えておく必要がある。「競争他社製品のレベルの把握」と「目標を実現するための基本的方策の設定」である。どちらかでも欠けるならば,それは目標設定ではなく“願望設定”であり,実現可否は時の運となる。「トヨタ自動車が発表する目標は常に実現する恐ろしい組織」とライバルを切歯扼腕させる理由は,トヨタ自動車の目標設定プロセスにおいて以上の二つの検討がしっかりなされるからである。

 今回は部品少数化について,競争他社製品レベルの把握を中心に,目標を設定する方法を述べる。

ベンチマーキングで優劣を把握

 一般に,部品種類削減・共通化の目標は,「現状よりも30%削減」や「現状の50%削減」といったように, “エイヤッ”と設定されることが多い。これは「根拠なき目標設定」である。製品の性能,機能,コストなどの目標設定は常に競合他社製品のレベルを把握して行うことが常識なのだから,部品種類削減・共通化の目標も競合他社の部品共通化レベルを把握した上で立てるべきである。

 日産自動車は,2009年度のリカバリープラン(業績回復計画)において,部品種類を2007年度比で2009年度末に35%減,2012年度末に50%減とする目標を立てた(『日刊自動車新聞2009年5月18日付』)。部品当たりの数量を2倍にしてコストを下げることが目的とのことだが,内部事情だけの目標設定なら十分な目標設定とはいえないだろう。確かに部品種類を50%削減できればコストは20%ほど下がる可能性が出るが,その際のMD指数は競合他社比で妥当なのか,50%削減の基本的方策とその実現可能性は検証したのかという点が気になる。

〔以下,日経ものづくり2009年8月号に掲載〕

日野三十四(ひの・さとし)
モノづくり経営研究所イマジン 所長,日本IBM 顧問
1968年に自動車メーカーに入社。1980年にトヨタ自動車のベンチマーキング開始。1988年にトヨタの部品共通化能力を超える手法を目指し,MDの研究を開始。2000年に経営コンサルタントとして独立。2002年に『トヨタ経営システムの研究』(ダイヤモンド社)を出版(韓,台,米,タイ,中で翻訳出版)。2003年に日本ナレッジ・マネジメント学会から研究賞受賞。2003年から日韓の重工業や電機メーカーなどでMDをコンサルティング。2007年に“製造業のノーベル賞”といわれる米Shingo Prizeから研究賞受賞。2008年から日本IBM顧問。