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写真:上重泰秀

 我々も技術教育は結構やっています。座学や技術教育センターなどで,構造解析のやり方とか,プログラミングはこうやればいいとか,大事な知識を伝えている。でも,本当に伝承したいのは「技術屋というのは,どういう観点でものを見て,考えるのか」ということ。ものづくり魂とでもいうのかな。これを若い人に伝えるのが,相当難しい。

 昔のように,ものづくりの全工程をじっくりと経験できれば,若い技術者は自分なりのものづくり魂を会得できるのですが,今はなかなかそういうチャンスがありません。学校を出て入社すると,いきなりどこかの部署に入って,あっという間に数年過ぎる。その間に,特定の仕事をこなすのは得意になるけど,何のためにその仕事があるのか,分からなくなっちゃうんですね。

 例えば,取扱説明書やマニュアルを制作しているチーム。もっと良いマニュアルにすべく顧客にアンケートをとる。すると「ここが分かりにくい」「あそこを改良して」といった意見が集まるので,全員で一生懸命頑張り,だんだんマニュアルを充実させていく。そして「こんなに分かりやすくなった」と満足する。でも,僕に言わせりゃ全然ダメ。だって,マニュアルなんか見なくても動く機械を造らなきゃ。

〔以下,日経ものづくり2009年9月号に掲載〕(聞き手は本誌編集長 原田 衛)

山本忠人(やまもと・ただひと)
富士ゼロックス 代表取締役社長
1945年神奈川県生まれ。1968年山梨大学工学部機械工学科卒業。同年富士ゼロックス入社。入社後すぐに米国や英国の開発拠点を渡り歩く。1987年DP事業部第一開発部長。1992年オフィス用小型複合機を担当するVIP事業部長に。1996年常務取締役(開発部門担当)。1998年に鈴鹿富士ゼロックスの代表取締役社長を兼務,部品事業の経験を積む。2002年富士ゼロックス代表取締役専務執行役員。このころ,通称「山本塾(現D&Mシニアマネージメント塾)」を開始。その後,技術開発本部やモノ作り技術本部など管掌の領域を拡大し,2007年6月から現職。