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エレクトロニクス機器の中核を担うLSI製品は,急速な勢いで高機能化・低コスト化が進んでいる。それを可能にしているのが,高度なLSI設計技術だ。今回の連載では,数多くのLSI設計技術のうち特に重要性の高いものを厳選し,紹介していく。第1回は,今後重要になるLSI設計技術の全体像について,ルネサス テクノロジの取り組みを紹介する。LSI製品の平均販売単価が低下傾向にある中で,求められるLSI設計技術の在り方を探る。(本誌)

直流電圧の標準器

長谷川 淳
ルネサス テクノロジ 設計開発本部

 LSIメーカーは今,大きな課題に直面している。半導体世界市場の推移を見ると,出荷数量および出荷額は順調に増えているものの,製品の平均単価が,1995年をピークに減少傾向に転じているのだ。これは,微細化によってチップ価格がどんどん下がる,いわゆる「チープ革命」が現実に起きていることを示している。我々LSIメーカーは高価なLSI製品によって収益を上げたいと思っているわけだが,それが相当に難しいということが分かる。この状況を打開するためには,高付加価値の製品を低コストで開発するLSI設計の仕組みが必須になる。

 ところが,実際のLSI設計コストは微細化とともに急増している。例えば,製造技術を90nm世代から65nm世代に微細化すると,チップに搭載できる平均的なトランジスタ数は1億1000万個から1億7000万個に増えるものの,LSI設計コストは約2.5倍にも跳ね上がる。65nm世代の製品を1種類設計するのに50億円強ものコストが掛かる。これは派生品ではなく,最初に作る製品の場合ではあるが,かなりのコストが掛かってしまうのが実情だ。

 先端SoC(system on a chip)を例に取り,LSI設計コストの内訳を紹介しよう。SoCの開発工程のうち最も人件費が掛かるのは,仕様決めからRTL記述・検証までの「システム・レベル設計」の部分である。ここに掛かる人件費は,LSI設計コスト全体の51%にも達する。つまり,上流の設計工程に,より多くのコストが掛かっていることが分かる。

 一方,RTL記述・検証からネットリストを生成するまでの「論理設計」に掛かる人件費は,全体検証も含め総コストの27%を占める。ネットリストからレイアウト・データを生成する「物理設計」に掛かる人件費は全体の5%にしかならない。また,LSI設計コストには人件費のほかに,EDAツールやそれを実行するための計算機資源に掛かるコストもあり,これらは論理設計用で全体の9%,物理設計用で同4%を占める。全体の中での比率はそれほど高くはないが,こうした工程で設計コストを削減する努力も重要である。

『日経エレクトロニクス』2009年9月21日号より一部掲載

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