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登場から20年近く経過したLiイオン2次電池。電気自動車への搭載も始まろうとするなど期待はますます高まっている。そこで,今回から数回にわたり,Liイオン2次電池の生みの親ともいえる元ソニーの西美緒氏に,Liイオン2次電池の誕生の背景から性能の進歩や課題,さらにはその将来までを解説してもらう。第1回の今回は,どのようにしてこの高効率の電池が登場するに至ったのかを振り返る。(本誌)

世界で最初のトランジスタ・ラジオ「TR-55」

西 美緒
元ソニー 業務執行役員上席常務

 いささか古い話で恐縮だが,2004年1月11日の朝日新聞(東京版)に次のような記事が載った。大阪府守口市の会社員と枚方市の大学生が大阪府警察により窃盗容疑で摘発されたというのだ。この二人「デンキを盗んだ」というから,電器店から電器(つまり,電気器具)か何かを万引きでもしたのかと思ったら,違っていた。ではいったい何をしでかしたのか。

ケータイも電池なければただの箱

 実は,屋外のコンセントから「電気を盗んだ」というのだ。被害額は共に1円程度だが,見逃すわけにはいかないとして警察が摘発した。

 調べによると,会社員は門真市の飲食店の看板用コンセントを使って,携帯電話機に5分ほど充電した疑いだ。大学生は京阪電鉄の枚方市駅前で踊りのパフォーマンスをしていたが,その際,スーパーの自動販売機のプラグをコンセントから抜いて,その代わりに音楽を流すために持参していたラジカセをつないで電気を盗んだという。どちらの場合も電池が切れてしまったのだろう。

 ポータブル機器全盛の現代においては,電源としての電池,特に2次電池が不可欠の存在だということを,この記事はあらためて感じさせてくれた。「ケータイも電池なければただの箱」というわけだ。

 このような背景を踏まえ,今回から数回に分けて,今や2次電池として最も重要な位置を占め,近い将来の電気自動車用駆動源としても期待されているLiイオン2次電池(以下,LIB)について解説していきたい。第1回はLIBの登場前夜を,以後,LIBの登場,LIB市場の急速な拡大,安全性などの問題点,大型化(電気自動車用など),LIBの将来などについて述べる。今回は,LIBやNi水素(以下,Ni-MH)2次電池以前の1次電池,2次電池がどんな状況だったか,なぜ新型2次電池が待望されるようになったかをおさらいしてみよう。

『日経エレクトロニクス』2009年10月5日号より一部掲載

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