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 2005年4月25日に発生した,西日本旅客鉄道(JR西日本)の福知山線列車事故。その事故を調査し,報告書をまとめた航空・鉄道事故調査委員会(現・運輸安全委員会)の信頼性が今,大きく揺らいでいる。当時の同委員会の調査活動における不適切な行動など,複数の不祥事が明らかになったからだ。

 まず最初に発覚したのが,事故調査に関する情報漏洩だ(図)。JR西日本社長(当時)の山崎正夫氏が同委員会の委員(当時)の山口浩一氏と非公式に面会し,調査の進み具合についての情報を得ていた。二人は,国鉄時代の先輩後輩の関係だった。

 JR西日本と接触した委員は複数に上る。こうして,JR西日本側は公表前の「事実調査に関する報告書の案」(2006年12月公表)や最終報告書原案の一部を入手したり,同社に不利な文言,具体的には「ATS(自動列車停止装置)があれば事故は起きなかった」という内容を報告書から削除するよう働き掛けたりした。

 それだけではない。JR西日本は複数の学識経験者に対し,同委員会が開催した意見聴取会の公述人に応募するよう要請。その際,一部に現金を渡したり,公述人には一部の資料を提出しないよう求めたりした。

 加害者の自覚のかけらもないJR西日本は論外だが,公正性・中立性を担保すべき同委員会が同社と接触し情報を漏らすという行為に及んだことは,遺族をはじめとする国民の信頼への裏切り行為である。その背景には,何があるのか。

〔以下,日経ものづくり2009年11月号に掲載〕

図●福知山線事故の調査過程
JR西日本は,事故調査報告書を公表前に手に入れていたほか,意見聴取会の候補者にも接触を図っていた。