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 「空っぽになる」には,いろいろな意味がある。何かにビックリしたり衝撃を受けたりしたときに「瞬間,頭の中が空っぽになった」などという。何も考えない,もしくは考えることができない状態を指すこともある。まれに,恋愛における別れ(ふられた場合が多い)のショックで,心にぽっかりと穴が開いたような状態をいうこともある。

 はなから訳の分からぬことをいって恐縮だが,今回はこの空っぽの状態を追究している研究者の話だ。名古屋工業大学セラミックス基盤工学研究センター教授の藤正督氏は,ナノ中空シリカ粒子を利用した機能性材料研究の第一人者である。

 中空とナノ。だから,空っぽなの 。つまらないシャレを言うものじゃない,と怒らないでほしい。この材料,中身は空っぽなのに,すごい機能や性能があるらしいのだ。

 物質は,気体,液体,固体と,三つの状態に区別されるが,藤先生は学生時代から粉体にこだわり,研究を続けてきたという。粉体の研究者は確かに少ないようだが,藤先生の研究成果を聞くと,粉体に大きな期待がわいてくる。見掛けはタダの白い粉。しかし,そこに秘められた物性は,いまだに分からないことが多いという。であれば,ひょっとして,nmサイズで中身が空っぽの粉体は,世界をリードするような,我が国発の大発明になるかもしれないのだ。

 もう一度言う。「空っぽなの」に,である。

〔以下,日経ものづくり2009年12月号に掲載〕

多喜義彦(たき・よしひこ)
システム・インテグレーション 代表取締役
1951年生まれ。1988年システム・インテグレーション設立,代表取締役に。現在,40数社の顧問,NPO日本知的財産戦略協議会理事長,宇宙航空研究開発機構知財アドバイザー,日本特許情報機構理事,金沢大学や九州工業大学の客員教授などを務める。