ついに日本政府がデフレを宣言し,直近では円高基調と相まって輸出に対する依存度の高い日本の製造業を苦しめています。景気が「二番底のがけっぷちにある」という,日本経済団体連合会会長のコメントも経済ニュースで報じられました。2008年下期からの世界同時不況の中でも,BRICs諸国の製造業は比較的堅調に競争力を高めつつあり,日本の製造業は大きな試練を迎えています。
それでも,業績が好調な日本の企業はありますし,いったんは落ち込んでも順調に回復に向かっている会社もあります。例えば,依然消費が旺盛な新興国のお客様が望む商品づくりに力を入れたり,円高に備えて生産拠点の現地化を素早く整えたり,増産に転じたりするなど,他社に先駆けて適切な手を打ったり,リスクを負いながら新しい方法に挑戦したりしているのです。
背景にこうした努力があることをよく知らずに,「うちの会社も業績が悪いけど,みんなそうだ」とか「今は消費不況でどうしようもない」などと,あきらめにも似たことを口にする人もいます。しかし,会社の屋台骨を支え,職場を導くリーダーである管理者が,同じような弱音を吐いていてはいけません。ここで大切なことは,多くの会社の業績が悪い中で高い競争力をつけている会社の管理者が何をしているかを知ることです。十中八九,日々の仕事を忙しくこなしながら,厳しい競争を勝ち抜くための揺るぎない人材育成に力を入れているはずです。
これまでに何度も言ってきましたが,人材育成は一朝一夕に成果が出るものではありません。確かに,不景気の中では緊急で手を打たなければならない仕事が増える傾向にあります。しかし,こうした緊急の仕事にメンバーを従事させながら,同時に彼らの成長を促す必要があるのです。「不景気だから人材育成にまで手が回らない」なんて,言い訳になりません。そんなことを言っていたら,ますます厳しくなるこれからの大競争時代に生き残ることが難しくなるだけです。
〔以下,日経ものづくり2010年1月号に掲載〕
HY人財育成研究所 所長