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「実践モジュラーデザイン」は,売れる製品とバランスさせ,最適な部品数で利益構造を改善する「モジュラーデザイン(MD)」について,体系的・実践的に解説するコラムです。

 革新活動の効果を金額でとらえるのは,一般に難しいことが多い。例えば,部品種類削減が直接キャッシュフロー効果に結び付く費目は,部品と直結する金型,木型,砂型などの型費だけである。部品少数化によるそのほかの効果は,段取り替え時間の短縮,在庫スペースの縮減,設計期間の短縮など,キャッシュフロー化しにくい“生産環境改善効果”である。

 完成品メーカーはコスト比で部品の70%程度を購入しているので,型費の正確な把握,さらには型費を論理的にキャッシュフロー化することが難しい。そこで,直接的なキャッシュフロー効果を期待できるVE(Value Engineering)を優先させ,1円,2円のために新しい部品を生んで部品種類を増やし,設計・製造現場がドタバタするような生産環境悪化を招いていることがある。

 モジュラーデザイン(MD)は,単に部品種類削減を実現する方法ではない。第6回(本誌2009年9月号)の「製品ミックス」で製品革新を行いつつ品ぞろえを充実させる。第7回(2009年10月号)の「設計・製造連携VE」で部品革新を行いつつ部品をモジュール化して製造革新につなげる。第8回(2009年11月号)と第9回(2009年12月号)の「設計のモジュール化」で設計技術の向上や設計期間短縮を実現しつつ,QCDEの4拍子がそろった部品のモジュール化を実現する,という手法である。

 つまりMDではF/V/Cコストのトータルでの低減とともに,売上高増加やクレーム費低減などのキャッシュフロー効果が期待できる。今回はMD活動の成果を,実際にキャッシュフロー化する方法について述べる。

〔以下,日経ものづくり2010年1月号に掲載〕

日野三十四(ひの・さとし)
モノづくり経営研究所イマジン 所長,日本IBM 顧問
1968年に自動車メーカーに入社。1980年にトヨタ自動車のベンチマーキング開始。1988年にトヨタの部品共通化能力を超える手法を目指し,MDの研究を開始。2000年に経営コンサルタントとして独立。2002年に『トヨタ経営システムの研究』(ダイヤモンド社)を出版(韓,台,米,タイ,中,ブラジルで翻訳出版)。2003年に日本ナレッジ・マネジメント学会から研究賞受賞。2003年から日韓のメーカーにおいてMDをコンサルティング。2007年に“製造業のノーベル賞”といわれる米Shingo Prizeから研究賞受賞。2008年から日本IBM顧問。