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「勝つ設計」は,日本のVEの第一人者である佐藤嘉彦氏のコラム。安さばかりを求めて技術を流出させ,競争力や創造力を失った日本。管理技術がこれまでの成長を支えてきたという教訓を忘れた製造業。こうした現状を打破し,再び栄光をつかむための製品開発の在り方を考える。

 前回まで,誌面の多くをマネジメントについて割いてきたが,今回から,設計者が本来行うべき創造性ある仕事や改善/改革の方法/コツについて解説していく。

 さて,本コラムで私は再三,CADのことをCopy Aided Designと揶揄してきたが,このことが設計現場に実に深刻な問題をもたらしている。流用設計が跋扈し,創造設計が極めて珍しくなってしまった点だ。実際,私が指導してきた一流企業でさえ,創造性を発揮し設計している設計者はほとんどいない。このままでは,我が国のものづくりの行く末が案じられる。

 それにしても,なぜそうなってしまったのか──。原因はやはり,需給バランスと競争力に求められると思う。時計の針を20~30年戻すと,当時の市場には旺盛な需要があった→供給すれば売れた→工夫しなくとも商いが回った。これがご承知の通り,バブル経済を生んだ。このサイクルの中で,企業はブクブクと太り,体内に多くの病巣を抱えてしまった。そしてバブル経済が崩壊すると,それらが大きな後遺症となって企業を苦しめたのである。

 筋肉質の健康体に戻りたい──。企業は努力するも,まだ足りない。それはどこか頭の片隅で,あの懐かしき良き時代をもう一度と,はかない夢を見ているからなのかもしれない。しかし,そんな時代がよみがえるわけなどない。かくて,日本が夢にうつつを抜かしている間に,BRICsやASEANの新興国が急追。需給面でも競争力の面でも日本に追い付き追い越しつつある。残念ながら,これが現状だ。

〔以下,日経ものづくり2010年2月号に掲載〕

佐藤嘉彦(さとう・よしひこ)
VPM技術研究所 所長
1944年生まれ。1963年に,いすゞ自動車入社。原価企画・管理担当部長や原価技術推進部長などを歴任し,同社の原価改善を推し進める。その間に,いすゞ(佐藤)式テアダウン法を確立し,日本のテアダウンの礎を築く。1988年に米国VE協会(SAVE)より日本の自動車業界で最初のCVS(Certifi ed Value Specialist)に認定,1995年には日本人初のSAVE Fellowになるなど,日本におけるVE,テアダウンの第一人者。1999年に同社を退職し,VPM技術研究所所長に就任。コンサルタントとして今も,ものづくりの現場を回り続ける。