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写真:中島正之

 ユーザーの立場に立っていない──。これが、一連のトヨタ自動車の問題に対する私の最初の印象でした。なぜ、そう感じたのか。それは、自動車メーカーがどれほど意識しているかは分かりませんが、後にも先にも自動車ほどユーザーの立場を考慮しなければならない製品はないからです。

 自動車という製品は運転免許制度に立脚して成立している。ユーザーに運転免許を与え、極端に言えば「あとはあなたの責任です」と、安全に対する一定の責任をユーザー自身に課しているんです。「安全は、人間がミスを犯すことを前提に機械側で確保する」という安全構築の大原則に立ち返れば、安全の最後の砦をユーザーに委ねる自動車は極めて特殊な製品といえます。

 だからこそ、自動車メーカーは自動車の残留リスクを極力下げる必要があるし、常にユーザーの立場に立った見方をする必要がある。
〔以下,日経ものづくり2010年4月号に掲載〕(聞き手は本誌編集長 荻原博之)

向殿 政男(むかいどの・まさお)
明治大学 理工学部情報科学科 教授
1942年生まれ。1965年明治大学工学部電気工学科卒業。1970年に工学博士(明治大学)。同大学工学部電気工学科専任講師、同電子通信工学科教授などを経て、1989年から現職(2002年10月~2008年9月は同大学理工学部長を兼務)。日本ファジィ学会会長、日本信頼性学会理事、中央労働災害防止協会「機械安全の包括的基準等に関する調査研究委員会」委員長、日本機械工業連合会「ISO/TC199(機械安全)国内審議委員会」主査など,数々の要職を歴任。シンドラー社のエレベータ事故調査では、社会資本整備審議会建築分科会建築物等事故・災害対策部会昇降機等事故対策委員会委員長も務めた。