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「勝つ設計」は、日本のVEの第一人者である佐藤嘉彦氏のコラム。安さばかりを求めて技術を流出させ、競争力や創造力を失った日本。管理技術がこれまでの成長を支えてきたという教訓を忘れた製造業。こうした現状を打破し、再び栄光をつかむための製品開発の在り方を考える。

 のっけから厳しいことを言うようで恐縮だが、最近の設計者は創造性に欠ける、あるいは創造力が落ちていると言わざるを得ない。その一方で、何とか良いものを造ろうと努力していることもまた事実だ。仕様に合わせて寸法や容量を機械的に決めていくだけではなく、ユーザーを考慮して少しでも使い勝手を高めようと工夫している。いずれにせよ、設計者は日々新しい図面を描き、新しい製品が次々と生み出されていく。

 こうした設計という仕事に対し、設計者はおおよそ次のような意識を持って臨んでいるに違いない。

  • 新しい製品はきっと売れる(と信じる、あるいは思い込む)
  • 使用機能を高めたり、時代のセンスを取り入れたり(よりカッコいい製品を創ったり)、さらには性能・出力で他社を圧倒したりすることで、機能的に競争力のある製品を創れる
  • 設計変更によって新規性や差異感をアピールできる
  • コスト的な競争力を高める
  • 新たなレイアウトへの対応を可能にする
  • 類似製品がない、全く新しい製品を創造する

 いずれも、設計者の意識、あるいは心構えとしては正しい。ただし、だ。結果論として、こうして生み出されたものが企業にとって部分最適であって、全体最適ではないことが間々ある。前回(2010年4月号)指摘したのは、まさにこのことだ。

〔以下、日経ものづくり2010年5月号に掲載〕

佐藤嘉彦(さとう・よしひこ)
VPM技術研究所 所長
1944年生まれ。1963年に、いすゞ自動車入社。原価企画・管理担当部長や原価技術推進部長などを歴任し、同社の原価改善を推し進める。その間に、いすゞ(佐藤)式テアダウン法を確立し、日本のテアダウンの礎を築く。1988年に米国VE協会(SAVE)より日本の自動車業界で最初のCVS(Certifi ed Value Specialist)に認定、1995年には日本人初のSAVE Fellowになるなど、日本におけるVE、テアダウンの第一人者。1999年に同社を退職し、VPM技術研究所所長に就任。コンサルタントとして今も、ものづくりの現場を回り続ける。