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「勝つ設計」は、日本のVEの第一人者である佐藤嘉彦氏のコラム。安さばかりを求めて技術を流出させ、競争力や創造力を失った日本。管理技術がこれまでの成長を支えてきたという教訓を忘れた製造業。こうした現状を打破し、再び栄光をつかむための製品開発の在り方を考える。

 部品数が増加する要因はいろいろとある。第1は、お客様の要望を取り入れようと新たな機能(部品)を加えるとき。これに関連し、前回(2010年5月号)では「ユーザーから『こんなものが欲しい』と言われるようでは、設計者としては恥ずかしい。ユーザーの欲しいもの、すなわちニーズを把握していないということだからだ」と厳しく指摘した。これに関しては、業種によってはなかなかお客様の要望をつかめないケースもあるので、「そんなことを言われても…」と、反論したくなる設計者もいらっしゃるに違いない。このことを重々承知の上で、私はあえて言いたい。読者の方が手掛ける製品を、お客様がどのように使うのか、どのような不満を抱くのかをつかむこと、そしてどのようにしたら「あなたに任せておけば安心」と思ってくれるのかを知ることが、勝つ設計のための必須条件である、と。

 次回、テアダウン技術の詳細に触れるが、他社の競合製品の機能や構造を比較分析し、顧客満足度の最も高い製品を設計して、初めて勝つ設計になるのだ。実際、お客様は常に各社の製品を比較分析し、それぞれの特徴を把握して購入している。これを考えるとやはり、勝つためにはここまで踏み込まなければならないのである。

〔以下、日経ものづくり2010年6月号に掲載〕

佐藤嘉彦(さとう・よしひこ)
VPM技術研究所 所長
1944年生まれ。1963年に、いすゞ自動車入社。原価企画・管理担当部長や原価技術推進部長などを歴任し、同社の原価改善を推し進める。その間に、いすゞ(佐藤)式テアダウン法を確立し、日本のテアダウンの礎を築く。1988年に米国VE協会(SAVE)より日本の自動車業界で最初のCVS(Certified Value Specialist)に認定、1995年には日本人初のSAVE Fellowになるなど、日本におけるVE、テアダウンの第一人者。1999年に同社を退職し、VPM技術研究所所長に就任。コンサルタントとして今も、ものづくりの現場を回り続ける。