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「渋滞学・西成教授の数学で闘え」は、技術の現場で発生する課題を、技術者が自ら数学を用いて解決する方法を学べるコラム。数学に苦手意識を持つ人でも楽しく学べるように「これだけは」という要点のみをまとめる。

 正方形の形をした4点に、皆さんの工場があるとします。4点すべてを道路で結び、しかもその道路の総延長を最小にするにはどうしたらよいか、前回から皆さんに考えていただいています。正方形の1辺を1とすると、例えば4点をXで結んだときの総延長は約2.83になりました。

 このXで結ぶ方法、実は非常に惜しいんです。惜しいんですが、これよりも短くなる結び方があります。さぁ、分かった方は前に出てきて、ボードに書いてみてください。

「あっ、分かった!」
(生徒の1人が声を上げる)

 どうぞ、どうぞ。

「これで間違っていたら、格好悪いなぁ」
〔笑いながら、その生徒がボードに下掲(1)を描く〕

 いいですね~。ありがとうございます。では、この総延長を計算してみましょうか。さぁ、ピタゴラスの定理を思い出しましょう(2010年5月号p.86の図を参照)。これを使えば、上下の辺を斜めに結んだ2本の線の長さが(√5)/2だと分かります。2本だと√5。√5は2よりは大きいので、残りの1辺の長さ1を足すと、3以上になってしまいます。Xで結ぶよりも長い。残念!

〔すると、生徒たちから下掲(2)や(3)などのアイデアが出る〕

 計算してみると分かりますが、どれも最短ではありません。うーん、そろそろ答えを言いましょうか。こんな感じです。

「あ~~~~ぁ」

〔以下、日経ものづくり2010年6月号に掲載〕

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西成活裕(にしなり・かつひろ)
東京大学 教授
東京大学先端科学技術研究センター教授。1967年東京都生まれ。1995年に東京大学工学系研究科航空宇宙工学専攻博士課程を修了後、山形大学工学部機械システム工学科、龍谷大学理工学部数理情報学科、ドイツUniversity of Cologneの理論物理学研究所を経て、2005年に東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻に移り、2009年から現職。著書に『渋滞学』『無駄学』(共に新潮選書)など。