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「技術者のための 最新・中国事典」は、中国に詳しいコンサルタントであり、現役の技術者でもある遠藤健治氏が、最新の中国事情を伝えるコラムです。変化が激しい中国のものづくりや市場、人々の文化や習慣など、日本企業のビジネスチャンスにつながり得る「今」の情報を素早くとらえ、独自の分析や対策などのヒントを技術者向けに提供します。

 日本企業と中国企業の違いはいろいろありますが、今、最も顕著なものは何かと問われれば、私は迷わず「情報収集力」と答えます。多くの中国企業が実に貪欲に情報の獲得に向けて動いているからです。

 情報を制する者が市場を制すと言われる通り、もちろん、情報収集は重要な企業活動の一つです。しかし、どんな手を使ってでも情報を引き出そうと必死になる点で、日本企業は中国企業にかなわないと思います。そこには日本企業同士が暗黙の了解としている「紳士協定」のようなものはなく、あの手この手を使って相手企業から貴重な情報を引っ張り出そうとします。その中には合法なものはもちろん、非合法なものまであります。

 後者として多くの日本人の記憶に新しいのは、2007年にデンソーで発生した機密情報盗難事件ではないでしょうか。社内のデータベースからエンジン設計などに関する大量の情報を記録した会社貸与のパソコンが同社の中国人技術者によって社外に持ち出され、他の記録媒体にコピーされた形跡があることが判明。こうして盗まれた情報が中国企業に売られたとみられました。この事件後、デンソーだけでなくトヨタ自動車グループ全体が情報管理体制を強化したと聞いています。

 ここまで悪質なケースはまれとしても、中国企業から最もガードが緩いとみられているのが日本企業であることは間違いありません。実際、これまで多くの日本企業が貴重な技術やノウハウの情報を中国企業に取られてきました。その手練手管に磨きがかかった今、日本企業から中国企業への情報の流出が加速しているといっても過言ではないのです。

〔以下、日経ものづくり2010年6月号に掲載〕

遠藤健治(えんどう・けんじ)
技術者・海外進出コンサルタント
日本と中国を含めたアジアのものづくりに詳しい技術者で、海外進出コンサルタント。京セラ入社後、開発部、生産技術部、品質保証部に勤務。中国工場における製造業務指導が評価され、同社を退社して精密機器メーカーの中国工場にて製造部長や品質部長を務める。現在、業務用機器メーカーの技術者として日本と中国をまたにかけて活躍中。著書に『日系中国工場製造部長奮闘記』『中国低価格部品調達記』(共に日経BP社)などがある。