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 美濃焼で有名な岐阜県多治見市。中でも笠原町は、建材タイルの産地として有名だ。最盛期には、同町のメーカーの出荷額だけで年間432億円(1989年)。どこの窯もフル操業で、空にスモッグが広がったほど隆盛を極めた時代もあったと聞く(図)。

 それが今は、ビルの建設ラッシュもピークを過ぎて、ビルの外壁はもちろんのこと住宅の外壁にも新しい素材が使われるようになり、美濃焼タイルの需要は細るばかりだそうだ。

 カネキ製陶所(岐阜県多治見市)は、同町の中では創業も古く、リーダー格のメーカーである。今の社長は、3代目の宮川憲太郎氏。その宮川社長の一番嫌なことは、「タイル屋」と呼ばれることだという。タイルメーカーなのにタイル屋と呼ばれるのが嫌いなのは、なぜだろうか。

 ビルや住宅の外壁材に使われるようになってからの美濃焼タイルは、その伝統的な芸術性や技巧は二の次になってしまった。見た目がいいのは当たり前、あとは建築物の外壁に採用される要件として無機材料ならではの耐食性や強度が満たされればいい。いつしか、1個いくらから1m2いくらの世界になってしまったのである。だが、宮川社長が率いるカネキ製陶所は、材料としてのタイルを生産するだけの「タイル屋」ではない。だから、そう呼ばれたくないというのだ。

〔以下、日経ものづくり2010年6月号に掲載〕

図●ビルや住宅に使われている外壁タイル
往時は相当なものだった。

多喜義彦(たき・よしひこ)
システム・インテグレーション 代表取締役
1951年生まれ。1988年システム・インテグレーション設立、代表取締役に。現在、40数社の顧問、日本知的財産戦略協議会理事長、宇宙航空研究開発機構知財アドバイザー、日本特許情報機構理事、金沢大学や九州工業大学の客員教授などを務める。