本誌3月号「多視済済」で紹介し、大きな反響をいただいた新しい撹拌機「M-Revo」。開発者はこの人、エディプラス(本社さいたま市)代表取締役の村田和久氏だ。羽根を使わずに撹拌するという常識破りのアイデアは、「ポケットマネーでやれ」と言われて生まれた。村田氏が、革新技術の開発秘話を語る。

攪拌機を開発したきっかけは、塗装工程をカイゼンするためでした。自宅の横には、親族が経営する、電子機器の設計・製造と工業塗装を手掛けるヤマテック(本社さいたま市)という会社があって、子供の頃から塗装工程を見てきました。そこでは塗装機や塗装ロボットといった設備はどんどん良くなっていくのに、攪拌作業だけは変わりません。塗料の入った一斗缶などに、羽根の付いた手持ちの攪拌機を入れてガーッと回す。何十年と同じなんです。
私は、ヤマテックの電子機器事業部に20年くらい在籍してから工業塗装事業部に移りました。そこで改めて塗装工程を見ると、今申し上げたようなやり方ですから、攪拌作業中に塗料が飛び散ってしまうんです。現場は壁や床などをビニールで養生し汚れたら交換する。そこには「汚れないようにしよう」という発想がありません。ちょっと不思議でした。
実は、それ以上に気になったのが塗装ラインのチョコ停です。1週間に1回、15分以上止まるんです。かつていた電子機器事業部には実装機の自動ラインが1本あり、そこでは「何があっても止まらないライン」を目指してやっていました。対して、ここ工業塗装事業部では「止まるのがデフォルト」。やはりおかしいと思って、カイゼンしようと考えたんです。
〔以下、日経ものづくり2012年10月号に掲載〕(聞き手は本誌編集長 荻原博之)
エディプラス 代表取締役