「第26回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2012)」が2012年11月1~6日に東京で開催された。日本の製造業には今、超円高、高い人件費や法人税、電力不足などの逆風が吹く。今回工作機械メーカーなどが披露した各種の展示には、復権を目指す国内工場にとって力強い手駒が数多く含まれていた。そのキーワードはズバリ、「JIMTOF」だ。
工作機械の展示会が世界で増えている中、日本で開催されるJIMTOFの見所は、何といっても、付加価値の高い技術を搭載した最先端の工作機械が出展されることだ。技術の発信元としてJIMTOFの魅力は依然として大きい。
今回は、超円高などで苦しむ国内工場に対して、いかに有効な解決策を提供できるかを考え抜いた技術展示が目立った。これらの技術は、[1]J:時短、[2]I:異能、[3]M:無人化、[4]T:多能、[5]O:大型化、[6]F:複雑化、という6つの軸で整理できる。
J:時短
加工時間の短縮(時短)を実現するワイヤ放電加工機「U3」を出展したのが、牧野フライス製作所である(図1)。より微細な電圧制御ができる電源回路(仕上げ回路)を搭載し、表面粗さを小さく抑えながら、放電加工を繰り返す回数(加工回数)を減らした。時短により加工コストを削減できる。
想定するワークは、自動車部品や電機部品といった一般的な部品のプレス金型や、医療機器向けなどの大型部品や板厚の厚い部品、人工骨など幅広い。表面粗さRz(最大高さ)が5μm以下で寸法精度が±4μ~5μmまでに収まる、精密金型ほど寸法精度が求められないワークだ。
〔以下、日経ものづくり2012年12月号に掲載〕

I:異能
他の多くの工作機械が鋼やアルミニウム合金でできたワークを加工対象とする中、唯一、高圧水を使いこなすことで、ガラスや炭素繊維、チタン合金といった難加工材に対応できる異能ぶりを見せたのが、スギノマシン(本社富山県魚津市)だ。
同社は、難削材でできた小物ワークの微細加工に適するウオータージェット加工機「KATANA2」を開発した(図2)。具体的には、チタン合金製の医療部品や、化学強化ガラス製のスマートフォンの部品、炭素繊維強化樹脂(CFRP)製の航空機の部品などの加工に向く。
KATANA2では、ノズルを含む切断ヘッドを一新した。具体的には、ガーネット(ざくろ石)製の研磨材(アブレイシブ)を含む高圧水を吐出するノズルの直径を0.3mmと細くするなどの工夫で微細な加工を実現している。従来はノズルの直径が1.0mmと太かった。
〔以下、日経ものづくり2012年12月号に掲載〕
