工作機械に組み込む冷却油用ポンプで国内シェア7割を占める日本オイルポンプ。2008年9月のリーマン・ショックの影響で、2009年の売り上げは前年比50%まで落ち込んだ。ここで経営再建を託されたのが、中尾真人氏だ。2009年9月に招しょうへい聘されてから3年余り、同社のものづくりと社員が大きく変わり始めた。

2009年の売り上げが前年比で半減したとはいえ、黒字は確保しました。事業基盤がしっかりしていることと、コスト削減を徹底していることが奏功したのです。しかし株主からは、この危機を契機として何か得るものがなければいけない、景気が回復した暁には元の姿よりもいい姿にならなければいけないと、私に声が掛かりました。
私はこの会社の業容を聞いた時、正直「これはうまくいく。チャンスだ」と思いました。理由は2つあります。1つは、事業領域。主力製品である工作機械向けの冷却油用ポンプは、優れた技術がないと造れないキーデバイスです。しかも世界に工作機械メーカーはたくさんありますが、冷却油用ポンプメーカーは限られます。こうしたキーデバイス分野のニッチトップであれば、必ずもうかります。
もう1つは、研究開発から設計、製造、営業まで、ものづくりの全部門が社内にそろっていることです。見方を変えれば、メスを入れるところがたくさんあるんです。複数の部門がうまく機能していない場合には大抵、それぞれが部分最適になっていますから、戦略的に全部門にわたって1本の軸を通し、全体最適を図れば大きく変わっていきます。
〔以下、日経ものづくり2012年12月号に掲載〕(聞き手は本誌編集長 荻原博之)
日本オイルポンプ 代表取締役社長