2012年後半において、中国の日系企業を悩ませている1つの問題が、中国人作業員によるデモやストライキでしょう。2012年8月には、尖閣諸島を巡る対立が契機となって中国で反日デモが起きました。デモ隊の一部の過激な映像がテレビやネットで頻繁に報道され、その後の不買運動や工場の稼働停止もあって、日系企業の不安は高まっています(図)。
作業員が起こした騒動は今回だけではありません。2008年9月のリーマン・ショックに端を発する世界同時不況から脱した2010年の初めには、作業員によるストライキが頻発。その多くは待遇改善を要求するものでした。同様の騒動が日系企業に限らず香港系や欧米系企業でも起こったことから、反日感情と結び付いたものではなかったのですが、いずれにせよ多くの日系企業が対応に苦慮しました。2010年後半以降も中国各地でストライキは散発しましたが、中国内での報道が規制されたこともあり、あまり大きく取り上げられなくなりました。 そして、今回のデモです。当初はストライキとは結び付かなかったのですが、9月以降になると日系企業の一部で反日をうたったストライキも発生しました。実は、この時も作業員の主たる狙いはやはり待遇改善であり、世間の反日トレンドに便乗しただけだったのですが、日ごろ一緒に働いてきた作業員たちが、表面的とはいえ反日というスローガンを使って行動を起こしたことは、日系企業を運営する側にとって大きなショックでした。〔以下、日経ものづくり2012年12月号に掲載〕

キャストコンサルティング 取締役・上海法人総経理