東北大学は、高温、高速の炎を使ったアトマイズ装置をハード工業と共同開発した。さらに、岩手大学の協力を得て、この装置を使って鉄基の微粉末を製造する技術を開発した。開発した複数の技術について、東北大学、岩手大学、ハード工業の共同出願で特許を申請している。
3者が開発したアトマイズ法を使うと、鉄基の微粉末を大量に、安く造れる。また平均粒径が数μmという極めて細かい微粉末を得ることができる。
鉄基の微粉末を自動車に使う場合、想定される用途はモータ、リアクトル、トランスの鉄心など磁力線を通す場所に使う磁性材料や、歯車、コンロッド、ベアリングキャップなどの焼結合金部品だ。
磁性材料はアモルファスになっていることが重要である。ヒステリシスが小さいため損失を少なくできるからだ。開発した方法で鉄基の微粉末を造ると平均粒径が小さいため冷却速度を速くでき、アモルファスにしやすい。
粒径が小さいことは、焼結合金でもメリットがある。従来の粉末では粒径が100~150μmあり、予備成形でプレスしても体積の7 %程度の空洞が残る。引っ張ると、そこを起点にして亀裂が進展するため、強さをそれほど上げられなかった。このため変速機の歯車を焼結金属にしてコストを下げようとしても、強さでは切削や研削で造る一般の歯車に勝てないため、なかなか実現しなかった。開発した方法では粒径が従来よりも2桁小さいので、空洞が少なく、強さを上げることができる。