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車両の電源電圧を12Vから高める試みが再び始まる。かつてと異なるのは、今回は12V電源を残し、適用範囲を限定していることだ。燃費を高めたい要求を背景に進化する、減速エネルギを回生し、駆動力を補う機能である。同機能への導入を契機に、将来は電動パワーステアリング(EPS)や電動コンプレッサなどに適用先が広がりそうだ。

 減速エネルギを回生して電池に蓄え、燃費を高める技術がハイブリッド車(HEV)からエンジン車に広がっている。2012年に発売したスズキ「ワゴンR」や日産自動車「セレナ」、マツダ「アテンザ」が代表例だ。オルタネータの電流容量を高め、蓄電池の性能を上げて実現する。セレナは回生機能だけではなく、駆動力を補う機能までも併せ持つ。

 今後、こうした回生機能や駆動力を補う機能はさらに進化する。ドイツの自動車メーカーを中心に、新しい電源系を採用する試みが始まるからだ。減速エネルギの回生と駆動力を補うのに使うモータ/ジェネレータ(オルタネータ=発電機とモータの機能を併せ持つので以下ではこう記す)の電源電圧を現状の12Vから48Vに高める取り組みである。

体積が大きくなりすぎる

 ドイツのAudi社やBMW社、Daimler社などの自動車メーカーは2011年末、電源の48V化に向けて「LV148」と呼ぶ規格を策定した。

 これを受けて半導体部品メーカーであるドイツInfi neon Technologies社は、48V対応の減速エネルギの回生および駆動力を補う機能に向けた半導体部品の開発を進めている(図1)。48Vに対応するには、インバータに使う半導体部品の耐圧を高めることなどが重要である。2015年ごろ、48Vの電池と当社の半導体部品をモータ/ジェネレータに使うメーカーが登場する見込みだ。

以下、『日経Automotive Technology』2013年5月号に掲載
図1 48V電源でモータ/ジェネレータを動かす
図1 48V電源でモータ/ジェネレータを動かす
Infineon Technologies社が試作した。耐圧90VのモータドライバICを新しく開発し、実装した。電力をスイッチングするMOSFETは基板の裏側にある。