つないで試すを繰り返すエレ設計
ほとんどの製品が電気・電子化されている昨今、もはや機械設計(メカ設計)と、回路設計や基板設計などのエレクトロニクス設計(エレ設計)は切っても切り離せない関係にある。特に、スマートフォンやタブレット端末のようなエレクトロニクス機器ではメカ設計者もエレ設計と無縁ではいられなくなった。
ところが製品開発の現場では、依然として構造やレイアウトを考えるメカ設計と、電気・電子回路を考案するエレ設計との間に大きな溝がある。製品開発を主導する多くのメカ設計者は、電気・電子周りはエレ設計者に任せておけばよいとばかりに丸投げしている。そのため、後になってノイズの問題が発覚したり、グラウンド(GND)が十分に確保できなかったりと、手戻りが発生することが多いのが実情だ。
だが、実はそうした手戻りは、メカ設計者がエレ設計の基礎的な知識を備えていればずいぶん減らせる。本連載では、架空の開発現場を舞台に、メカ設計者が身につけておくと役立つエレ設計の考え方と基礎知識について解説していく。
主人公は、自動車部品を主に開発・生産するミヤモト製作所で機械設計を担当してきた若手技術者のオーツ氏。彼はある日、新製品事業の開発プロジェクトのリーダーを任された。タブレット端末にもノートPCにもなる薄型ノートPCを開発せよというのだ。メカ設計の経験しかなく、この新しい挑戦に少なからず不安を感じていたオーツ氏。相談に乗ってもらうべく、かつての恩師であるルーミン教授を訪ねた(図1)。
〔以下、日経ものづくり2013年5月号に掲載〕

O2 Lab. リサーチフェロー