電気自動車(EV)開発会社のSIMDriveは、2012年2月から取り組んできた先行開発車事業第3号の「SIM-CEL(以下CEL)」が完成したと発表した(図1)。昨年の「SIM-WIL(以下WIL)」より高性能を狙い、0→100km/h加速時間は4.2秒と、1.2秒短くなった。そのために2人乗りとし、モータの最大トルクを700N・mから850 N・mに上げた。
先行開発に参画している三五、スタンレー電気、日本スピンドル製造などのメーカーがそれぞれの技術を磨き、SIM-Driveに協力した。
三五はハイドロフォームで成形した鋼管をCEL用に納めた。上部構造はWILと同じくハイドロフォーム材。今回はピラーとルーフレールと一体にした。Aピラー部はSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)のようにピラーが2本立ち、その間が三角窓になっている。三角窓を挟む前後両方のピラーのうち、前側にあるAピラーと、ドア開口部前端の1辺に相当するドアピラーは2本ともハイドロフォーム材。Aピラーは980MPa級、ドアピラーは590MPa級だ。
Aピラーは車体の前に向かい、ドアピラーは下へ向かって鋼板製の床構造につながる(図2)。2本はドアの上で合流し、2本を束ねた状態のままルーフレールとなって車体の後ろまで伸びる。このため2本の間には“のりしろ”状に平らな場所がある(図3)。2本を、接着剤とアーク溶接を併用して接合した。
前面衝突したとき、フロント・サイド・フレームから入ってくる通常の衝撃はドアピラーが受ける。25 %オフセット衝突で入ってくる衝撃はAピラーが受ける。ともに、衝撃を受けた部材が力を後ろまで伝える。通常の造り方では三つ又に分岐する場所があり、その接合部が弱点になるが、新しい造り方では接合部そのものがない。
素材は直径65mm、厚さ1.6mmの鋼管。ドアピラーの拡管率は12 %。Aピラーの拡管率はもっと小さい。


