アベノミクス、新興国、モジュール化、規制―。自動車産業の将来を左右するこれらのテーマに詳しい専門家が、本誌と「日経ビジネス」が2013年4月10日に開催したセミナーで講演し、将来を展望した(図1)。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券シニアアナリストの吉田達生氏は、安倍政権のアベノミクスと呼ばれる一連の政策が自動車業界に及ぼす影響を分析した。円安効果、公共投資、そして環太平洋経済連携協定(TPP)の三つが追い風になるとみる。
金融緩和による円安効果で輸出損益が改善することに加えて、海外子会社との連結決算による換算利益が高まる(図2)。その結果、これまで削ってきた研究開発費や設備投資費など将来につながる投資に収益改善分を回せることが円安効果の大きな利点とした。
公共投資に関しては、トラックなどの商用車の需要や震災の復興政策に伴って車両の買い替え需要が喚起されるとみる。日本がTPPに加わる効果については、アジアを中心に事業を展開しやすくなることを挙げた。
ただし吉田氏は、TPPの目に見える効果は限定的で、過度な期待を抱くなと釘も刺す。海外メーカーが日本に車両を輸入する際には現在でも関税はそもそもゼロ。また、最終的に相手国は関税を撤廃することになるものの、それには時間がかかるという。高性能で価格が比較的安い日本車への警戒心は極めて強いからだ。
