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第2部:現場の復興

座学だけでは身に付かない
体感訓練で安全の死角なくす

 現場力が失われているのは、ベテラン運転員の持っていたノウハウや知見が継承されず、若手が現場で経験を積む機会が少なくなっているからだ。そこで、それらノウハウや知識、技能を再び取り戻そうと、化学業界は体験重視の教育に力を入れている。それとともに、現場力再構築に向けて今の現場力を客観的に把握しようとする動きも始まった。

 ただし、現場力を再構築するための特効薬や魔法の杖があるわけではない。地道な努力を徹底して継続していくしかない。

三井化学

 三井化学は、茂原分工場内にある「技術研修センター」を活用してプラント運転員の知識と経験の底上げを図っている。同センターは「安全に対する強い感受性を養うための施設」(同センター所長の森山義晴氏)だ(図1)。そこでの研修の最大の特徴は、「見て、触れて、体験する」こと。以前ほど現場でいろいろなことを経験できなくなった今、それを補完し、現場力の基礎を築くのが同センターの役割だ。
〔以下、日経ものづくり2013年6月号に掲載〕

三菱化学

 重大事故を経験して現場力の再構築に取り組んでいる点では、三菱化学も同様だ。2007年12月の同社鹿島事業所第2エチレンプラントの火災事故では、設備が不十分だったことに加え、当たり前の作業と思い込んで作業基準書に記載しなかったことが実施されず、協力会社の4人が死亡することになった。

 この反省から、同社は基準・ルールづくりや教育、設備管理、変更管理、工事管理、作業管理と多様な面から事故を防ぐ取り組みを進める*3
〔以下、日経ものづくり2013年6月号に掲載〕

日本化学工業協会

 一口に現場力を再構築する・高めるといってもどこから手を付けてよいか分からないことも多い。まずは、現状の把握が必要だ。何がどこまでできているのか、何が足りないのか─―。実力と弱点を把握してこそ、効果的な取り組みが可能となる。そこで、現場力を診断するためのツールが相次いで提供されている。
〔以下、日経ものづくり2013年6月号に掲載〕

保安力向上センター

 現場力も含む現場の安全を守る能力を「保安力」と位置付け、会社の文化や基盤といった広い視点で保安力を見つめ直そうというのが、「保安力評価システム」である。NPO法人の安全工学会が2013年4月に開設した「保安力向上センター」が策定した*5
〔以下、日経ものづくり2013年6月号に掲載〕

*3 この他、独自のリスクアセスメント手法なども開発している

*5 保安力評価システムは、2010年に経済産業省の委託を受けて始まった「事業者の保安力評価に関する調査研究」が前身となっている。