食の安心・安全に対する要求が高まる中、閉鎖空間の中で環境を制御しながら作物を栽培する植物工場が増えてきている。製造業の中でも、海外移転などで発生した工場の空きスペースを有効利用しようと、植物工場を新規事業として検討する企業は多い。しかし、参入したものの採算が合わず、撤退する例も少なくない。そんな中、日清紡はイチゴの量産化に成功し、着々と事業化を進めている。同社の取り組みをレポートする。
徳島空港とJR徳島駅のほぼ中間、吉野川支流の今切川に沿って日清紡ホールディングス(以下、日清紡)の徳島事業所はある*1。その徳島事業所内の一角で、独自ブランドのイチゴ「あぽろべりー」を栽培する植物工場が稼働中だ(図1)。
この植物工場は、2008年までデニム生地を生産していた工場の建屋を活用したものだ。「生産拠点をインドネシアへと移動したため、空きスペースとなっていた」(日清紡ホールディングス新規事業開発本部新規事業開発室部長で徳島事業所長の真鍋忠利氏)
そのスペースを活用して設置した植物工場では現在、約20人の作業者が約7万株のイチゴの栽培やパッケージといった作業に従事する。本格生産が立ち上がれば、ケーキなどで使われる業務用と一般消費者が購入する生食用を合わせて、1日に約1000パックを出荷することになる(図2)。
〔以下、日経ものづくり2013年6月号に掲載〕


*1 日清紡は2009年に繊維、ブレーキ、紙製品、精密機器、化学品の5事業を分社化し、社名を日清紡ホールディングスに変更した。徳島事業所には、繊維の日清紡テキスタイル、紙製品の日清紡ペーパープロダクツ、化学品の日清紡ケミカルなどのグループ企業の工場もある。