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大阪ガスケミカル(本社大阪市)は、新規材料や新規技術を開発する拠点「フロンティア マテリアル研究所」を設立し、2013年4月に開所式を行った。研究所といえば、売り上げなどの数値目標とは無縁という印象があるが、ここは違う。研究テーマは数年後の事業化を目指したもので、10年後に100億円の事業創出を狙う。そこで求められる研究者とは。

写真:直江竜也

 当社はカメラレンズ用樹脂から、太陽電池用シリコン溶融炉などの断熱材向け炭素繊維、活性炭とその応用製品、木材保護塗料など非常に幅広い事業を手掛けてきました。しかしフロンティア マテリアル研究所では、これら既存事業とは違う新規事業分野を創出していきます。5年以内に新規材料を開発し、10年後には売上高で100億円規模の事業を目指す。これだけはっきりとした売り上げ目標を持つ研究所は、世界広しといえど珍しいのではないでしょうか。

 こうした売り上げ目標を掲げた背景には、「売り上げてなんぼや」という事業化を念頭に置いて研究開発に当たる研究者があまりに少ないという現実があります。実際、多くの研究者は、自分で開発したものが世に出て量販店などの店頭に並ぶことの喜びを知らずに、「特許を20件取った」「どこどこで賞をもらった」といったことで満足しています。

 しかしものづくり全体を俯瞰して見ると、特許を取ったり賞をもらったりというのはあくまで通過点にすぎません。世に出てお客様に喜んでいただく、それが売り上げにつながるという到達点を、私は研究者にも味わってほしい。そのために、自分で研究開発したものに対して、「売ってなんぼや」という意識を植え付けたいのです。これを一言で表せば、起業家精神です。だから私は、「3 年間でこれだけの研究費を使って、結局なんぼ売り上げるんや」と、研究者に常々問い掛けをしています。これには、ちょっと度肝を抜かれている研究者もいるんじゃないかな。「なんで、私、売り上げ目標なんて設定されるの」と。

 このように私が起業家精神を強く意識するようになったのは、ある出来事がきっかけでした。


〔以下、日経ものづくり2013年7月号に掲載〕
(聞き手は本誌編集長 荻原博之)

山田 光昭(やまだ・みつあき)
大阪ガスケミカルグループ フロンティア マテリアル研究所長
1961年大阪府生まれ。1987年大阪市立大学大学院(前期博士課程)修了、同年大阪ガス入社。1999年7月より開発研究部高機能材料プロジェクト部長などを経て、2012年4月から現職。母校の大阪市立大学ではラグビー部の総監督を務める。趣味はゴルフ、ドライブ。