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 宇宙航空研究機構(JAXA)は2013年5月30日、低ソニックブーム設計概念プロジェクト「D-SENDプロジェクト」の第2フェーズ試験(以下、D-SEND#2)で使用する超音速試験機を、富士重工業宇都宮製作所で報道陣に公開した(図1)。同試験機は、超音速飛行時に発生するソニックブームを軽減するような形状に設計されており、その効果を実証する試験が同年7~8月にスウェーデンのエスレンジ実験場で実施される予定だ。

地上での騒音低減を目指す

 JAXAは2007年から次世代超音速機技術の研究開発を開始。超音速旅客機の課題は経済性と環境適合性と捉え、前者に対しては空気抵抗低減技術を、後者に対してはソニックブーム低減技術や離着陸騒音低減技術などを開発してきた*1

 このソニックブーム低減技術の飛行実証を行うのが、D-SENDプロジェクトである。同プロジェクトでは、低ソニックブーム設計の効果を確認することに加えて、その結果をソニックブームに関する国際的な環境基準の策定にも利用する。

 ソニックブーム現象とは、航空機が超音速で飛行した際に機体各部から発生する衝撃波が大気中を伝播する間に統合し、地上において瞬間的な爆音として聞こえる現象である。音圧が急激に高まってから徐々に負圧まで下がり、再び元の圧力へと急激に高まるN型の波形として観測される。


〔以下、日経ものづくり2013年7月号に掲載〕

図1●超音速試験機
図1●超音速試験機
カモノハシのような先端部形状(a)や後部下面のうねり形状(b)によって、衝撃波が発生するタイミングを分散させる。機体を構成する部品の多くはアルミニウム合金の削り出しで作られており、「主翼を構成する部品など、手作業による仕上げで高精度に仕上げている」(富士重工)という。

*1 2003年に退役したコンコルドは、このソニックブームが大きかったため超音速飛行は海上のみに制限されていた。